12の感覚を学ぶ


                        1、下位感覚

1、触覚
☆触覚は外の世界を知り、自分自身を知る感覚です。同時に外の世界と自分との境界線を感じる感覚です。

 触覚の器官は皮膚です。皮膚は体の全部に広がっています。
裸になって、まったく知らない真っ暗な部屋に入って行ったとイメージします。すべての感覚を遮断したとき触覚が理解できます。

 真っ暗闇で何かに触ると、緊張感を伴い抵抗感が感じられます。外からやってくるものに押されているように感じます。そしてそのものに対して押し返します。赤ちゃんはどこからどこまでが自分の足なのか手なのか最初は分かっていないといいます。生まれたばかりの赤ちゃんを裸にしてお風呂に入れるとき、びっくりしたようにビクッとなって手足を硬くして緊張します。あわててガーゼの布を体にかけてあげたことを思い出します。すると安心してお湯の中でとても気持ちよさそうにしていました。赤ちゃんは触覚によって自分と周囲との境界を長い時間をかけて学んでいくのだそうです。ですから赤ちゃんをおくるみで包んであげなければ、輪郭がつかめず不安感につながります。

 私たちは触覚によって外の世界を知り、自分自身を知っていきます。それと同時に触覚を通して自分自身の境界、他者との境界も知っていくのです。
 幼児期に触覚が十分育たなかった子どもは社会性に影響を及ぼし、他者との関係を作るのが非常に困難になるそうです。心理的な面でも問題を持つようになり自分が幸せでないと感じます。触覚が十分育たないと多動になったり、不安症になったりします。

 触覚にダメージがあるとこんなにも深刻な問題を抱え込むことになるのですね。大きくなればなるほど触覚を育むことは難しくなるように思います。生まれると同時に育てていかなければならない感覚であることをしっかり認識したいと思います。


2、生命感覚
☆ 私たちの身体の状態がよい状態なのか、悪い状態なのかを知らせてくれる感覚です。

 生命感覚を通して、具合のいいとき、悪いときを感じとります。また、お腹がすいた、喉が渇いたということも教えてくれます。生命感覚の器官は体全体にいきわたっています。生命感覚が自分の体の調子を教えてくれることによってそれに対処することが出来ます。生命感覚は生命を維持するために欠かせない大切な感覚です。

 生命感覚が機能しないで生まれてくる子どものことが新聞に出ていたそうです。その子は一人でいる時ローソクに火をつけてあそんでいて、ローソクの炎の中に指を突っ込んでしまいました。その子は痛みも何にも感じることが出来なかったため悲惨な事故になったとのことでした。本当に生命感覚がないと生命に危険が及ぶのですね。
生命感覚が第一に教えてくれるものは 飢え、のどの渇き、危険についてです。

 生命感覚の現われは痛みです。痛みを通して私たちに知らせてくれます。痛みを感じたら体の中に何か正常でないことが起こっているということです。
生命感覚は警報システムのようなものなのですね。タインさんは、食べ過ぎると胃が痛みます。その次には食べ過ぎないようにしようと考えることができます。私たちは痛みから学ぶのですと述べておられました。

 今日では痛みを避けようとする傾向があるとタインさんはいいます。
 現在は非常に過保護です。大地で子どもたちを遊ばせません。汚いからといって泥んこで遊んだり、危ないからといって木登りしたりするのを禁じます。子どもに痛みを感じることをさせなくなっています。
 また、子どもたちは体を動かして遊ばなくなっています。多くの子どもは一日中テレビをみたりして、体を使って疲れるまであそぶことをあまりしません。
 子どもの肥満、想像力の欠いた子どもが増えてきているのも生命感覚が健康でない状態を示しています。

 タインさんは、大人も同じように世界的に痛みを嫌がり楽なことを求めているといいます。
 
 またタインさんは、努力をして何かを成し遂げたとき達成感が得られます。この達成感は生命感覚が持っている対極のものだといいます。痛みを伴って努力しその後に達成感があるのです。また、痛みを感じる心があれば、他者の痛みに思いをはせることが出来ますと。本当にそうですね。悲しみや苦しみに出会わなければ、他者の苦しみも悲しみも決して理解できないでしょうから。

 時代を超えて語り継がれたお話は子どもたちの生命感覚に働きかけるのだそうです。しかし、昔話の中の残酷な場面を書き直して子どもに与えているとしたらどうでしょう。どきどきする怖い場面でも深い意味が隠されているといいます。昔話はすべて調和的に構成されていて素晴らしいバランスがあるのだそうです。ディズニーのお話のように残酷な場面を省いて、ただ夢見るようなお話にしてしまったら、そのお話の中に隠された叡智が無くなってしまいます。怖い、残酷と思えるような、また、悲しい辛いお話は子どもにはふさわしくないという意見もありますが、私は子どもたちが空腹や喉の渇きを感じなければならないのと同じように、昔話の中の空腹や喉の渇きを通り抜けることを体験させることが大切だと思います。そのことを通して生命感覚を養うことが出来るのですから。


3、運動感覚
☆ 運動感覚は自分の体を動かす能力ではなく、自分の体が動いている、あるいはじっとしているということを感じる感覚です。

 運動感覚は自分の動きを感じると同時に他の人や物の動きも感じます。運動感覚は一般的には筋肉が感じる動きだといわれていますが、タインさんは動きとは私(自我)が体を動かせているのです。私が動きをコントロールしているのですと言われます。

 毎日、A町からからB町へ行く男がいます。彼が何故、A町からB町へ行くのか知りたいと思いました。彼の体をくまなく調べます。呼吸の仕方、汗の分泌、血圧…。風力や気温、歩く速度も調べます。限りなく調べても、彼が何故A町からB町へ行くのか知ることが出来ません。そこで視点を変えて彼の友人に聞いて見ました。すると「B町には彼の恋人がいるのさ。」という答えが返ってきました。彼には内的な意図があったのです。だから彼はそこへ行くのです。意図をもった彼は、B町へ行く前にもうすでにそこへ行っています。人間は動くとき必ず意図を持っています。

 動きにはカップを持って水を飲むことや2階へ上がるなどの小さな動きから、遠くへ出かけるなどの大きな動きがあります。また、人生においてこの人に出会った、この職業についたという人生の中の大きな動きもあります。私たちが偶然と呼んでいる出来事は私たちが出会いたいと望んだからこそ与えられたものなのです。

 タインさんは、大きな意味での動きを理解することは私たちの人生の動きを理解することだといわれます。運動感覚が人生の動きを理解することにつながるなんてすごいですね。考えてみればどんなに小さな動きでも自分がこうしようという意図を持って動いているのです。それが積み重なると私の人生に繋がっていくのですね。今回、運動感覚を学んで、「私が自分の人生を作っているのだ」ということをあらためて認識しました。子どもたちにとっても運動感覚を養うことが人生を切り開いていくための力になるのです。


4、平衡感覚
☆体のバランスを取る感覚です。平衡感覚は精神のバランスにも結びついています。

 触覚と生命感覚は、ほとんど一緒に働いています。硬いものや冷たいものを触ったとき、もうすでに心地よくないと感じます。生命感覚とつなぎ合わせたように使います。
 運動感覚と平衡感覚もほぼ同時に働いています。
 片足を上げて立っていようとするとバランスを崩します。もう一方の足を一歩踏み出すとバランスを取り戻します。歩くことは、バランスを崩して、また取り戻しての繰り返しを行っているのだといわれます。バランスを取るということは、自分と外との間に均衡をとるということです。バランス感覚がなくなれば、右、左、上、下という空間が分からなくなります。

 平衡感覚の器官は内耳にある三半規管です。この器官を通して3次元の中でのすべての方向がわかります。私たちは宇宙飛行士のように空中に浮かんでいるときにはバランスを取ることができません。バランスを取るためにはしっかり大地に足をつけていなければなりません。

 タインさんは、精神的なバランスを取るためには自分自身の中心を持つ必要があるといわれます。これは自分自身の自我と結びついているのだそうです。自我が自分の中にしっかりといて、自分の中心を持って立つ人がバランスの取れた人です。自分が中心にいると他者と結びつくときエゴイストになりません。バランスの取れた人は社会的な人です。これは平衡感覚が働いているからなのだそうです。

 これらの4つの感覚、触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚をシュタイナーは身体的、肉体的な感覚と名づけました。なぜなら、それらは私たちの身体についての知恵と知識を教えてくれる感覚だからです。

 この4つの下位感覚は発達の土台になる感覚で、4つの下位感覚なしに健康な人になることは難しいといわれます。
この下位感覚が育たないとどんな問題がおこるのか、下位感覚を育てるためにはどのようなことをすればいいのかをみていきたいと思います。

《触覚、生命感覚が育たないと》
 触覚が十分育たないと、自分の確かさが得られなくなり不安や恐怖といった感情を持ちます。心配性の子どもは触覚の未発達に関係しています。生命感覚も同時に未発達です。
心配症の子どもは女の子に多く見られます。自信がなくいつも怖がります。特に夕方から夜にかけて、寝る前が一番怖がります。安心感がなくいつもお母さんにまとわりついています。
男の子の場合は、多動になり攻撃的になる子どもが多くいます。
不安をもっているので自分自身を満たすことができません。いつも動き回り、たえずしゃべっています。

 このような子どもたちに大人が出来ることは、子どもを理解し、いつも大丈夫かと気遣ってあげること、大人が彼らを認めてあげることが大切だといわれます。

 また、芸術的な活動をすることも癒しになるのだそうです。粘土あそびや庭仕事、歌うことなどです。生活の中にリズムを持たせることも安心感をもたらします。毎日、毎日同じことを繰り返すことも安心感につながります。暖かさや自然食の食事、十分な睡眠、居心地のよい場所、着心地のよい服を着せるなども大切です。

 生後何ヶ月間の間、十分に触ってもらえずに育てられた子どもは、4歳~5歳ごろになって心配性や多動といった症状が出てきます。そのようなときに触覚と生命感覚を通して働きかけるプログラムをタインさんより学びました。このプログラムはお母さんが夕方から行うものです。

(触覚と生命感覚に働きかけるプログラム)
4時~5時
 子どもの活動として粘土をして遊びます。大きい玉と小さい玉を二つ作ります。大きい方の玉の真ん中をへこませて鳥の巣を作ります。小さい方の玉で小鳥を作ります。小さい小鳥を巣の中に入れてあげます。この活動を通して触覚を感じ安心感を与えます。家を作ってその中に赤ちゃんを入れてあげる。洞穴に熊を入れるといったことでもかまいません。

5時~5時30分
 子どもをひざの上に抱いて、昔話を聞かせます。主人公が困難に出会って、最後には幸せになるようなお話がいいのです。

5時30分~6時30分
 お母さんは夕食の準備をします。子どもはお母さんの側で絵を描いたりして遊んでいます。
夕食は、出来るだけ消化のよいもの与えます。

7時~ 
眠りの準備をします。
 足湯につからせます。足を包んであげてマッサージをしてあげます。これらをしている間、歌を歌ったりハミングをしたりしてリラックスさせます。最後にオイルを塗ってあげます。

治癒的効果のあるゲームをします。
 目を閉じて、どんぐりや松ぼっくりなどを足で触らせて、それが何であるかを当てるゲーム。点数をつけて面白くしてもいいです。
 お手玉を頭の上に乗せてバランスをとるゲーム。いすの上からジャンプするゲームなどをします。

 寝かせるときは、おしゃべりをしたり、歌をうたったり、最後にお祈りをします。

 毎日毎日同じリズムを繰り返すことが安心感につながります。お話も同じ話を何週間も続けてします。

 このプログラムは多動で落ち着きのない子にもよい方法です。違う点は、子どもとの会話の内容です。
 不安症の子どもは明日のことを話します。不安症の子どもは変化を嫌います。過去は安心していられるのでそれに執着するのです。新しいことにオープンにしてあげるために明日のことを話します。
「明日、朝起きたら、ピンクの服を着ようね。学校から帰ったら友達を呼ぼうね。」…など詳しく話します。

 多動の子どもには過去のことを話します。朝から夜までの出来事を詳しく話します。「今日のご飯は卵焼きだったね。さっきのゲームで3点取ったね。…等」
多動の子は、一箇所に留まるのがいやなので一つのところにとどめる必要があるのです。一日の中でよかったことを話してあげます。自分自身に誇りが持てるようにします。

 最後にタインさんは、もっとも大切なことはお母さんが決して急がず穏やかでいることですと述べておられました。子育てまっ只中のお母さんが、いつも急がず穏やかでいることは並大抵ではできません。私自身も子育て中は、いつも急がせていたし、穏やかでいられないことだらけでした。「難しい!」自分のあり方を反省し「次はかんばろう」と思うことからはじめたいですね。
このプログラムは心配性の子どもや多動の子どもだけではなく、すべての子どもの触覚を育てるのにもとても有効なものだと感じました。

 
《触覚、生命感覚を育てるには》
① 大人が愛をこめて触ってあげること。
 触ってもらって心地よいと感じる感覚は同時に生命感覚も育てます。触り方が極端に強い場合は身体的な虐待になります。まったく触らないのは無視につながります。子どもに触る時はバランスが取れている必要があります。やさしく愛をこめて触ってあげることによって、触覚、生命感覚は育つのです。

② 触り心地のよい、自然の素材に触れること。
 子どもに与えるおもちゃが生命のないプラスチックや人工的な素材であったり、身につける物も化学繊維や着心地の悪い物であったらよい感情は育ちません。良いものに触れることによって触覚は育つのです。

③ 決まった場所に同じものがあり、何度も触ること。
 いつも同じものがいつもそこにあることや、何度も何度も触ることによって確かさを育てます。いつも自分のそばにあるという体験は確かさを育てるのです。その場合、おもちゃがたくさんあり過ぎるのはよくありません。

④ 物を丁寧に扱うこと。
 物も丁寧に触ることが大切です。物を乱暴に扱うようなことをすれば子どもに影響を及ぼします。

⑤ 身体を触ってあげるような、わらべ歌や手遊びゲーム遊びを取り入れます。

⑥ リズムのある生活をします。一日の生活が規則正しいリズムであることが大切です。
 
 こ6つのことは、どれも当たり前のことなのですが出来ていないことだらけです。

①の「大人が愛をもって触ってあげる」
 昔は、どこへ行くのもおんぶされていつもお母さんと触れ合っていました。今はバギーという便利なものが出来たため一人で座らされています。ミルクを飲ませるのもテレビを見ながら飲ませているお母さんが大半をしめていると聞きます。

②の「さわり心地の良い自然の素材に触れる」
 今はプラスチックのおもちゃがあふれています。子どもに着せる服もファッション性を優先し、着心地の良いものを選ばない傾向にあります。

③の「決まった場所に同じものがあり、何度も触ること」
 おもちゃが山のようにあり、片付けるときも一つの大きな箱に詰め込んだりします。我が家もそうでした。子どもが喜ぶので色んな人がついつい買い与えてしまいます。どこに何があるのかも分からなくなり最後には壊れてごみのようになっていました。おもちゃは大きな箱に詰め込むのではなく、いつも決まった棚に片付けること。これだけでも実行したいですね。
小さい子はたいていお気に入りの毛布やタオルがあり、もう汚くてぼろぼろになっているのにそれを欲しがります。保育園になかなか慣れない子どもは、家からお気に入りのタオルを持ってきてもらっていたことがあります。いつも同じものを触ることって本当に安心感につながるのですね。

④の「物を丁寧に扱うこと」
 今の消費社会にあって、物を大切に丁寧に扱うことが本当に少なくなっています。「使い捨て」時代をなんとか食い止めたいものです。

⑤の「身体を触ってあげるような、わらべ歌や手遊び、ゲーム遊びをする」
 わらべ歌や手遊びなどは、おじいちゃんやおばあちゃんから教わることがほとんどなくなったため、一般的な家庭では廃れつつあります。これらを伝承していくには保育園や幼稚園の役割が大きいと思います。保育士が学び実践していくことが求められます。

⑥の「リズムのある生活をする。一日の生活が規則正しいリズムであること。」
 夜9時までに寝る子どもが少なくなっていると聞きます。夜の12時までも平気で起きているそうです。居酒屋にお子様メニューがあるのにびっくりしたことがあります。お酒を飲む場所に子どもを連れて行く時代なんですね。

 今の私たちの生活は、触覚や生命感覚を脅かすものだらけです。触覚や生命感覚の大切さを認識し、家庭や保育の場でこの2つの感覚が健やかに育まれるように改善していきたいものです。

《運動感覚と平衡感覚が育たないで起こる問題》
 タインさんは、体におきていることは心の中でもおきているといいます。子どもが直立して歩けるようになったとき、とても誇らしげに振舞います。バランスを取って歩けるようになると自分は素晴らしいんだという感情が生まれます。そのことが自信を持つことを助けるのだそうです。内的なバランスとは自分を信頼することですと。

 子どもは大人の動きを模倣します。運動感覚がダメージを受けていると模倣することができません。子どものあそびは、大人の動きを真似て自分のものにして、自分のやり方でやってみせることです。動きを真似ることが出来ない子どもは遊べないため、他の子どもとも遊ぶことができません。その結果、落ち込み、孤独、ふさぎこむといった態度が見られます。
  
 触角と生命感覚の場合と同じように運動感覚や平衡感覚が未発達の子どもも、自分への評価が低く自信がありません。多動であったり、心配性になったり、いつも不安です。一人ぼっちで落ち込んでいます。

《運動感覚・平衡感覚を育てるには》
① 床拭き、窓拭き、洗濯、配膳、料理、園芸といった実生活に関わる仕事をすること。
② 自動車や電車に乗らず、歩く習慣をつけさせること。
③ 過保護にならないようにチャレンジさせること。木登り、階段の上り下り。飛び石、ボール投   げ、お手玉あそび、クラフト、手仕事、縄跳び、のこぎりで木を切るなど。
④ あまり早くからスポーツをさせないこと。スポーツは遊びと違って偏った運動になってしま   うため。
 
 これらのことも当たり前のことなのに出来ていないのが現状です。子どもに家事を手伝わせることが少ないですし、子どもも大人と同様、運動不足です。
運動させるというと偏った動きのスポーツをさせてしまいます。昔の子どもはほっておいても様々な遊びを通して運動感覚も平衡感覚も発達させることが出来ました。今では子どもが生き生きとした遊びができるようになるには大人の手助けが必要な時代です。地域社会との連携も必要ですね
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by higuchi1108 | 2006-11-04 13:14 | 12感覚
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