水彩画(にじみ絵の世界)

大人のためのにじみ絵
 幼児の時は、ただ3つの色を好きに画用紙の上ににじませて色を楽しむだけなのですが、小学校へ行くようになるとだんだん課題のある絵を描くように指導するのだそうです。シュタイナー学校の1年生は、3つの色(赤、黄、青)を使って雰囲気を描き、まだ細部は描きません。2年生になると、色から動物が現れるように描くようにします。4年生になってやっと輪郭がはっきりしてきます。7年生でベールペインティング(色を乾かしながら重ねていく画法)を習い、遠近法を習います。


 大人が楽しむためには、遠近法を知っていると便利だと思います。
遠近法をインターネットで調べてもらいました。

(志村勲の写真論と世界の写真家のホームページから)
ttp://homepage2.nifty.com/photocell/enkin4.html参照

 それによると、遠近法の目的は、奥行きとか上下とか前後を理解させることなのだそうです。これは言葉を変えると立体ということです。平面の上で立体を描くのは根本的に無理があります。これは手品と同じなのだと書かれてありました。

 西洋の近代遠近法はルネッサンスごろに完成されたのだそうです。

 まずルネッサンス以前の遠近法は、
1、心理遠近法
 紙の上に何かの形を描いただけでその後ろに背景があると納得できます。日本の国旗を思い描いてください。赤い円が白地の上にあるように見えるはずです。白地の下にあるとは感じません。

2、重なりの遠近法
 たとえば円形を少しずらして重ねて描きます。次に重なった部分を消します。すると消された方が奥にあると納得し、消さなかった方は前にあると納得します。

3、グラデーション遠近法
 たとえば円形を描き、中心点から遠くなるにしたがって濃く塗っていきます。すると円は球体に見えます。

4、鳥瞰図(ちょうかんず)遠近法
 紙の上に横線を引き、水平線とみなします。線の下に同じ大きさの船を描くと、線に近いほうが遠く見えます。

5、大小遠近法
 同じものを大きさを変えて描くと、小さく描いたものは遠く、大きく描いたものは近くに見えます。

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ルネッサンス以降の西洋遠近法
6、幾何学遠近法
 遠いものは縮小して見える原理によるものです。壁など、本当は平行なものを故意に平行でなく描き、無限で交差させ消滅させます。

7、空気遠近法
 対象の手前にある空気を強く意識させ、対象が遠くにあるように思わせる方法です。具体的には遠方の対象をかすませたり、青みがかって描きます。

8、消失遠近法
 遠いものはぼんやり見える原理にもとづく遠近法です。写真などで背景をぼかすと人物が浮き上がって見えるようになる原理と同じです。

9、色彩遠近法
 暖色と寒色を並べると、暖色が前進して見え、寒色は後退して見えます。

東洋の遠近法
10、墨絵遠近法
(水墨画の教え)
 ・墨はうすくしなさい。
 ・遠い山は小さくかすんで描きなさい。
 ・近景は岩などを強い線で描き、凹凸をつけなさい。
 ・中景の山は上部をはっきりと、下のほうは水蒸気にかすんだように描きなさい。
 ・滝から流れでる川は、遠くは川幅を狭く、近づくにつれて川幅を広くかきなさい。
 ・空に飛び去る鳥の群れは、前方を大きく後方を小さく縮小して描きなさい。

 これらの遠近法の中でも、シュタイナーやゲーテは色彩遠近法を提唱しました。

色彩遠近法とは
 緑の中に赤、肌色、青を描くと、赤は前に出て見え、青は後ろに退いて見えます。肌色は同じ面に見えます。色彩が備えているこのような近い感じ、遠い感じが色彩遠近法の基本なんのだそうです。

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(色で光を描く)
 次に、ゲーテの色環を思い出してください。
白に近い強い光から光がだんだん弱くなると…黄色→オレンジ→赤→紫→青に変わります。
暗闇から光がだんだん強くなると…青→緑→黄緑→黄色に変わります。

ゲーテの色彩論をホームページで調べてもらいました。
http://maijar.org/sugoi/column/text/giworamu/text2.html参照

 ゲーテの色彩論をかいつまんで書いてある箇所を引用してみると
 ・白とはまぶしくて色が見分けられないこと。
 ・まぶしい光が暗くなったときに最初に見える色は黄色。
 ・黒とは暗くて色が見分けられないこと。
 ・暗い光が明るくなったときに最初に見える色は青。
 ・灰色とは、色が交じり合って見分けられないこと。
 ・色環の向かい合う色同士は引き立てあう。
 ・色環の隣り合う色はなじみ合う。
 ・赤にはプラスのイメージがある。(前に出ている感じ)
 ・緑にはマイナスのイメージがある(奥まっている感じ)
                                  とあります。
 

 印象派の画家でベルト・モリゾの「読書する少女」という絵の解説がかかれてありました。

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 少女の髪と肌は強く光が当たる白から、黄色、若干の緑を含みながら赤から紫に変化します。服も、白から黄色、若干の赤を含みながら緑→水色→青と塗られています。
バックの観葉植物も白→黄色→緑→青と塗り分けられています。印象派は色環をぐるりと囲むように色を使っています。こうすることでただ光が感じられるだけではなく、色同士がなじむのです。そして、手前に見せたいものほど赤を多く使って、奥まって見せたいものほど緑を多く使って、奥行きを出そうとしています。特に緑系の観葉植物の前に赤系の少女の顔を置くことで、少女の顔が引き立てられています。

 まさにゲーテの色彩論に当てはまる絵です。

 私がとよさんから習って描いた絵にもこれに当てはまる絵がありました。とよさんは、このことをしっかり意識していたのですね。私の絵を皆さんに公開するのはとても恥ずかしいのですが。どんなに絵心がない人でも描けるということを知ってもらうために…。

(色環の隣り合う色同士はなじみ合う)
 赤紫から出発してぐるりと色環を囲むように色が塗られています。

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 真ん中の黄色から出発して横にオレンジ→赤→紫に進み、反対側は、黄緑→緑→青→紫と塗られています。

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(色環の向かい合う色同士は引き立て合う)
 黄色と青

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(暖色系は前進して見え、寒色系は後退して見える)
 動物が前にいるように見える

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遠近法
(幾何学遠近法)

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(水墨画の心得)
 空に飛び去る鳥は、前方を大きく後方を縮小して描きなさい。

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 最後にシュタイナーの色彩の本質の講義録の中にこのようなことが書かれてありました。

 色彩世界は、地球進化の過程の中で、まず輝きとして宇宙から地球を照らすところから始まったのだそうです。その時、地球はまだ液体状でした。そして冷えて固まっていきました。色彩をまず流動状から固体状に移すにじみ絵は、色彩自身が体験してきた定着化の事実が私たちによって再体験できるものだと述べておられます。そのとき初めて色彩を生きることが出来るのですと。
 そしてシュタイナーは次のように語っています。「私たちは、色彩と共に心の生活を営みます。私は黄色を見て喜び、赤色を見て尊厳とまじめさを感じ、青色を見て、優しい、泣き出したくなるような気分になります。画家が色彩と共に生きることを知ったときにのみ、色彩の生命が表現できるのです。色彩と対話することが大切です。色彩が画面の上でどのようにありたいのかを色彩自身に語らせるのです。」と。

 色彩と対話するとはどういうことなのでしょう。周りのことをまだ意識しない幼い子どもは、色であそぶことによって色彩と対話しているのではないかと思います。幼い子どもは色彩と対話することが出来るのです。子どもたちは、にじみ絵を描くとき、最初にゾウやキリンの絵を描こうと思って描いているのではありません。色がにじんでいろいろな形が現れたとき、「うあ、ゾウさんみたい。」「これはキリンさん」というように色彩の中から、色彩と対話することによって様々な形が生まれてくるのです。私たちも、「上手に描きたい」という思いを捨てて、色で遊び、色彩と対話することを目指したいものです。にじみ絵を通して、感情が豊かになり心が癒されるように。
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by higuchi1108 | 2006-12-03 15:41 | 芸術表現
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