食事について

食事について
 現在は飽食の時代です。おいしいものが山のようにあります。食べたいものはなんでも手に入ります。また、手間暇かけて調理をしなくても手軽に何でも買える時代です。その半面、食の安全面で危機的な状況が訪れています。添加物だらけの加工食品、農薬づけの野菜、最近ではうその表示をしたりして摘発される業者が後を立ちません。何を信頼してよいのやら…。
 今の日本では飢えに苦しむことはなくなりましたが、私たちの知らない間にこういった食べ物によって心身が蝕われているとしたら怖いことです。アトピーや肥満、子どもなのに成人病に苦しむ子どもたちが増えています。これらの子どもたちはこのような状況の犠牲者なのでしょうか。

 しかし、このような不安から極度に食べ物に関して神経質になってしまうと生きにくくなってしまいます。こんな話を聞いたことがあります。小さいときから食べ物に気をつけ、家庭で調理した安全なものしか食べさせなかったお母さんがいました。その子が大きくなって大学に入り、大学の食堂で初めて食事をしたのだそうです。すると、すごいジンマシンが出てきたとのこと。ある程度、害のあるものでも食べて馴らしておかないと社会生活を営む上で障害が出てくるのでしょうか。
 また、「甘いものは子どもには一切食べさせません。」という方針のお母さんにも出会いました。おじいちゃんおばあちゃんのところへ行くと飴やらケーキやらを食べさせるといって怒っていました。子どもはおじいちゃんおばあちゃんとお母さんの間に立たされてかわいそうでした。
また、子どもには砂糖や肉は一切食べさせないという人にも出会いました。

 そうは言っても、子どもがアトピーだったら食べ物を制限せざるを得ませんし、まだ小さな体の乳幼児の子どもの食生活には細心の注意が必要なのは確かです。
 農薬や添加物の少ない食べ物を選んで与えることは大切です。基本は、より安全な食材で家で料理をしたものを食べさせることだと思います。でも、家にいるお母さんだってたまには息抜きしたいこともあります。両親が共働きの家庭では理想通りにはいきません。たまには、外食や加工食品、出来合いのものを食べさせることもしかたがないことです。
 また、家で調理する場合でもどんなものをどのように調理すればいいのでしょう。
食に関しては様々な考え方があります。色々な考え方に振り回されるのではなく「私はどうするのか。」ということをしっかり考えることが大切だと思います。
 考える土台として、シュタイナー幼稚園での食事やおやつはどのようなものなのか、シュタイナーの食に関する考え方はどうなのかということをお伝えできればと思います。

シュタイナーは、次のように言っています。
 「わたしは、どのようなものを食べるのがよいのかを扇動するつもりはありません。それぞれの食べ物がどのように作用するかをお話しするだけです。菜食主義者がきて、<軽い無力感があります。>ということがあります。そのようなとき私は、それは肉を食べていないからだといいます。客観的に考察しなければなりません。何かを強制することがあってはなりません。」と

マクロビオテック
 今、マクロビオチィックの食事が注目され取り入れている人も増えていると聞きます。ミカエル・カレッジの里子さんから考え方の基本を少しだけ教えていただきました。シュタイナーの考え方と同じところもあり、違うところもあります。

 マクロビオチィックの基本的な考え方は穀菜食といわれるものです。宇宙の秩序にのっとった食べ方で、具体的には玄米を主食とした穀物と、野菜、海草、豆類、大豆加工品などの味噌、醤油、塩、油を使って調理します。動物性食品や卵、乳製品をとることはなく、砂糖やみりん、はちみつなども一切使うことはありません。

何故、動物性食品を食べないのかというと、
 この世の中は「陰」と「陽」という二つの力のエネルギーによって構成され展開さているという考え方から来ています。「陰」は主に植物(野菜類)で、「陽」は動物(人間も含む肉や魚介類)です。陰―陽―陰―陽の大きな展開は宇宙の秩序をなしているといわれます。
「陽」は「陽」を反発し。「陰」は「陰」を排斥して結ばれません。動物(人間)が動物を食べることは宇宙の秩序を乱すことだといわれます。

 陰性のものは主に葉菜類、果物です。塩や醤油、味噌、漬物などは陽性です。その中間に穀物、根野菜、豆類、海草、お茶、油があります。陰と陽どちらかに偏ることなくバランスの取れた食事が理想なのですね。

 砂糖やみりん、はちみつなどをとらない理由
 これらの食品はとても陰性が強いものなのだそうです。こういったものを日常的にとっていると細胞は緩み、体は冷えていくといわれます。特に砂糖は体の中で燃焼するのに非常にたくさんのビタミンB1を必要とします。ビタミンB1が不足すると体は酸化してしまうので、これを中和しようと骨からカルシウムをとってしまいます。今の子どもが骨折しやすいのは砂糖の取りすぎが原因の一つなのかもしれません。

 また、食材選びの基本は、その土地、その季節に取れるもの、そして精白しない、皮をむかない、アク抜きしないことを心がけます。さらに大切なこととして、生命の糧となってくれた食物に感謝しよくかむことです。と書かれています。
 「生命なきものは、生命の糧とならず。」とは、細菌学者の三木謙三氏の言葉です。蒔けば芽の出る、保管しておけば成長、変化するものこそ生命源としての食物であり、栄養的にもバランスよく、栄養素が含まれているといわれます。この考え方は、シュタイナーの考え方も同じだと思います。
「陰」と「陽」を併せ持つ一つのものを丸ごと全部いただくという理念から、精白したり、皮をむいたり、アクをとったりということはしないのだそうです。

 里子さんの授業でマクロビオテック方式のきんぴらごぼうを作りました。
 ごぼうとにんじんをよく洗い千切りにします。もちろん皮をむいたりアクをとったりしません。それをなたね油を少し入れて弱火でゆっくりといためます。十分、炒まったらひたひたに水を入れ、ふたをして蒸し煮します。最後に醤油で味を調えて終わりです。野菜の中のうまみが出てとてもおいしかったですよ。アクも旨味に変わるのですね。


 では、シュタイナーの食に対する考え方はどうなのでしょう。
小児科診療室(シュタイナー教育・医学からの子育て読本)の本によると

砂糖については
 砂糖は生命のない無機物に近いものです。エネルギー源としての砂糖は、植物の緑色の部分で形成され、根、茎、葉、花もしくは果物の中に蓄えられます。  人間にとって砂糖は一つのエネルギー源ですが、人間は砂糖のエネルギーを使用する上で自分で消化活動を行う必要はないのだそうです。つまり砂糖は新鮮な植物とは違って臓器の生命活動を呼び覚ますことがないのです。むしろ、体が健康であれば、自分で十分に作り出せるはずの物質を砂糖は変わりに補ってくれるのです。とあります。

 健康なときは砂糖をとらずに過ごしたほうよいということでしょう。でも、この本の著者であるグレックラー氏は、体が病気だったり疲れきっていたりするときは砂糖を取ることによってエネルギーを補給し消化活動を助けてくれるといいます。
 砂糖なしで育てられ、成長がおもわしくなく皮膚の色も青ざめていた乳児が、食事の中の糖分を3パーセント増やしただけで数週間のうちに元気になったという例があるそうです。このような時は砂糖は非常に効果のある物質だというのです。私たちも心身が非常に疲れているときには甘いものが無性に欲しくなりますものね。
 グレックラー氏は、砂糖を何が何でも食卓から追放せよというのではなく、砂糖は子どもの気質や体質に応じて適度に使用されるべきものです。と述べておられます。胆汁質と憂鬱質の人は甘いものをたべるとよいと言われています。

 ただ、気をつけないといけないこととして甘さは、なぐさめ、包み込み、支える作用があるといいます。
このような作用は、砂糖の摂取を頻繁に繰り返す傾向を引き起こすのだそうです。砂糖中毒になった子は、落ち着きがなく、忍耐力や集中力を欠くようになると。子どもが好んで飲む市販のジュース類の中には大量の砂糖が入っているので要注意です。

 もう一つの注意点として白砂糖は控えめに使うべきだと言われます。白砂糖は結晶化が何度も繰り返され、すべての付随物質が取り除かれています。まったく生命のないものになっているのですね。

 はちみつは、単に砂糖の代わりに使うべきではないと書かれています。はちみつは非常に強い作用をもつ物質であり、人間の代謝系に多面的な刺激を与えるのだそうです。日本では、抵抗力の問題からはちみつを与えてもよいのは1歳を過ぎてからと指導されています。

人口甘味料の使用はお勧めできません。

卵、肉については
 人間の体は、たんぱく質を構成するすべてのアミノ酸を自分で構成することは出来ません。生きるために必要なアミノ酸は、食べ物を通して摂り入れなければならのです。この必須アミノ酸はあらゆるものにふくまれますが、動物性の肉製品、卵の中に豊富に含まれているのだそうです。牛乳の中にも十分に、また豆類の中にも少量ではありますが含まれています。

いつから子どもに卵や肉を食べさせるべきなのでしょう?
 母乳はたんぱく質の量は少ないですが、生まれて間もない赤ちゃんにとっては疑いもなく最良の栄養です。グレックラー氏は、生後3年間は自然によってもたらされた母乳の栄養モデルに従うことが理にかなっているといわれます。つまり、乳製品、穀物、野菜、果物などいわゆる乳菜食を続けるということです。

 生後数年間は、卵や肉を避けたほうがいいという理由はもう一つあります。卵や肉には体の成長や体重の増加を加速する作用があるそうです。人間は動物と違って、身体の発達の速度がとても遅いのです。それによって心と精神の発達が可能になるのですと。

 また、たんぱく質を植物から摂取することによって、神経組織を新鮮にする力を発展させることができるのだそうです。

 幼児期には乳製品や野菜を中心にした食事をし、それ以降はそれぞれの子どもの欲求に合わせて変化をつけ、質的にも問題のない食事を与えるということです。

 しかし、たんぱく質は人間にとってなくてはならないものですが、量は決して多すぎてはいけないそうです。動脈硬化の大部分は、たんぱく質の摂取過剰が原因によって引き起こされます。血液がどろどろして黒ずんでくるのですね。

乳製品については
 日本人をふくむアジヤの人間は乳児期をすぎると、乳糖を分解する酵素の活性が低下していくのだそうです。生後2,3年目からは乳製品を取るべきではないという考え方もあります。私は、牛乳を一気飲みすると下痢をします。
一人ひとりの体質によるものなので、必ずしも牛乳がよいとか悪いとか決め付けられるものではない。と書かれてありました。

穀物について
 グレックラー氏は、食べ物を選ぶ上で積極的に穀物を取り入れることには意味があると述べています。

 シュタイナーは、人間の神経・感覚系のはたらきは、植物の根のはたらきに対応している。人間の新陳代謝のはたらきや生殖機能は植物の花に対応している。リズム機能の血液循環と呼吸は植物の葉に対応している。と述べています。
 「種」である穀物は根や葉や花の部分の食べ物とは違って、体に一面的な作用を及ぼすこともなく、むしろさまざまな身体機能が調和するように支えてくれるとのことです。
マクロビオテックの「陰」と「陽」の考え方でも穀物は、その中間にあります。

 シュタイナー幼稚園では、様々な穀物を使ったおやつを曜日ごとに提供しているところが多くあります。
たとえば
 メルヘンこども園のおやつ(6人分)
月曜日 玄米がゆ
    カップ1杯弱の玄米に4倍の水をいれ、圧力釜で炊く。重りが動いてから弱火にして    20分炊く。火を止めて15分たったら食べる直前にレーズンを少々入れる。

火曜日 はとむぎだんご
    はと麦、カップ8分目。水は耳たぶくらいの柔らかさになるくらいの分量をいれて丸める。   30分蒸して、メープルシロップをかける。

水曜日 きびがゆ
    カップ1杯弱のきびに4倍の水を入れて圧力釜で炊く。重りが動いたら弱火にして20分     炊く。火を止めて20分蒸す。食べるときにしそふりかけをかける。

木曜日 天然酵母パン
    強力粉1カップ、ライ麦粉半カップ。酵母、塩少々を水をいれ弾力がでるまでよくこねる。    冷蔵庫で一晩発酵させる。
    オープンで焼く。100度 10分、 150度 10分、180度 10分

金曜日 ミューズリー 
    オーツ麦1カップ、りんご(2,3ミリの薄切りにし、棒状に細かく切     
    る。)レーズンを器に入れ、牛乳を注ぐ。季節の果物やナッツを入れてもよい。
 
 食事を提供している園でも、メニューはたいてい玄米ご飯と野菜いっぱいの具のたくさん入った味噌汁やスープです。

 食材も有機野菜、バイオダイナミック農法で取れた野菜を使っておられました。シュタイナー幼稚園の食事は決して豪華ではありません。とても素朴ですが、私はとても贅沢な食事に思えました。また私は、子どもにはたくさんのメニューを用意し色々な種類の食べ物を食べさせることがよいと思っていました。でもそうではないのですね。いつも同じものを繰り返し食べることで子どもは安心するのですね。いつもと違うメニューが出てくると緊張して食べない子どもがいました。子どもにとって繰り返しが大切であることは食事でもいえることなのですね。スイスのシュタイナー幼稚園のおやつは毎日毎日、パンとりんごのペーストでした。

人間の持つ歯の構成から見てみると
 門歯8本…果物、野菜を切る歯
 犬歯4本…肉を噛み切る歯
臼歯20本…穀物をすりつぶす歯

「穀物5:菜2:肉1 の割合で食べなさいよ。」と歯の構成を通して体が教えてくれているようです。

 人間は穀物を主に食べるように出来ているのですね。穀物は「種」です。種から芽が出、やがて実をつけます。生命あふれる食べ物です。

 このような生命あふれる食べ物は、太陽や土の恵みからもたらされました。それらに感謝する気持ちも忘れてはなりません。シュタイナー幼稚園では感謝の心を育てるために、お祈りをして食事をします。

うた
 大地が作り、太陽が実らせた。
 ありがとう太陽、ありがとう大地
 感謝していただきます。
祈り
 大地はこれらをくださいました。
 太陽がこれらを実らせました。
 愛する太陽、愛する大地
 私たちは、決して忘れません。
 いただきます。

 また、食卓にお花を生けて飾ったり、食事の準備を年長児が手伝います。
お料理のお手伝いも子どもたちは大好きです。野菜を切ったり、材料を混ぜたり、こねたり、パンを形作ったり…。
タ インさんは「料理は芸術です。そして時には癒しになります。料理は子どもたちに実生活に触れさせ、喜びをもたらし、自分は役に立っていると自信をもたせてくれます。そして、母なる地球の恵みに思いを至らせてくれ、世界の人たちへの思いやりを育ててくれる。」といわれます。

 シュタイナー幼稚園のすばらしいところは、子どもたちが遊んでいるかたわらで先生が手仕事をし、料理をつくります。部屋中いい匂いが漂います。幸わせいっぱいの家庭があるのです。
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by higuchi1108 | 2008-04-05 16:57 | 幼児教育講座
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