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12の感覚を学ぶ

12の感覚論・はじめに

 タイン・チェリー氏の12感覚論の授業が始まりました。シュタイナー教育では感覚を育てるということをとても大切にしていると聞きます。私は、保育の現場にいるとき感覚を育てるという意識がまったくありませんでした。

 「魂の扉・12感覚」の著者アルバート・ズスマン氏は生命を担う源泉は3つあるといいます。第一の源泉は食べ物です。第二の源泉は空気です。そして第三の源泉が感覚です。
ズスマン氏は、「私たちは第一と第二の生命源に大きな危惧を持ちながら暮らしています。大地も海も大気も、様々な廃棄物によってますます汚染されていきます。しかし、汚染されているのはそれだけではありません。第三の生命源である感覚も著しく汚染されています。にもかかわらず、私たちはそれをあまり意識していないのではないでしょうか?」と述べておられます。

 12の感覚を取り上げた治癒教育家養成講座のレジュメの中で、バーバラ氏も次のように述べておられます。
 「私たちの感覚は、近代的な生活のありようのために破壊されつつあるものです。私たち、現在のすべての人間が感覚の退化に苦しんでいます。」と述べておられました。そして、「大人だったら、芸術活動や話すこと、動くことで自分の感覚を再活性化させることができます。けれども子どもはできません。ですから、私たち大人がこの12感覚を理解することによって、私たちが経てきたと同じような感覚の退化を子どもたちの中で起きないように予防することが出来ます。又、すでに痛めつけられてしまった子どもたちの感覚を再教育したり、癒したりすることが出来きるのです。」と

 考えてみれば、感覚は人間の体や心と密接に結びついているのです。それにもかかわらず、感覚に対して今まであまりにも無関心であったように思います。自分自身や子どもたちの感覚が脅かされていることにも気がつきませんでした。現在、大人や子どもたちの中で様々な問題として現れてきているものの多くが、実は感覚に問題があったのですね。感覚のことを理解できていなければ心の教育もできません。私たちは子どもには感受性が豊かな子どもに育って欲しいと願っています。バーバラ氏は、「感受性の豊かさは、まさに感覚から始まるのです。」と言われていました。
 この感覚論を知ることで、保育を実践する上で、また、自分自身が生きていく上で大きな助けになると思っています。

                 タイン・チェリー氏による講座
                      12感覚論

 一般に皆が知っている五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)以外にも感覚があります。シュタイナーは12個の感覚があると述べています。この五感の他に、熱感覚、運動感覚、平衡感覚、生命感覚、言語感覚、思考感覚、自我感覚があります。この中でも、言語感覚、思考感覚、自我感覚はシュタイナーがはじめて語った感覚です。

 私たちは生まれて成長していきます。成長するということは世界をだんだんと知っていくことだといわれます。世界とは、地球はもちろん、月や太陽、星々も含まれます。その中に自分自身も含まれます。まず私たちは、最初は感覚を通して世界を知り学んでいくのです。

 私たちは、目、耳、鼻、舌、などの器官を通して様々なことを知覚します。世界を知るために感覚を使うのです。どんなに高い哲学的な思考や知恵も感覚から始まっていると述べておられました。


12の感覚を3つに分類すると次のようになります。

1、下位感覚
 肉体感覚とも呼ばれています。下位感覚は、触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚の4つです。この下位感覚は、肉体的な活動を知覚する感覚で、主に0歳~7歳に育つ感覚だといいます。

2、中位感覚
  感情の感覚とも呼ばれ、嗅覚、味覚、視覚、熱感覚の4つです。この中位感覚は、自然界(周囲)を知覚する感覚で、主に7歳~14歳に育つ感覚です。

3、上位感覚
  社会的、精神的な感覚と呼ばれています。聴覚、言語感覚、思考感覚、自我感覚の4つです。他者を知覚する感覚で、主に14歳~21歳に育つ感覚です。


 私たちは一つだけの感覚に注意を払うことは困難です。すべての感覚が相互に作用しあい、共に働きあい、支えあっているからです。

実験
 目隠しをして部屋の中から廊下に出て行く実験をしました。目が見えなくなると、頼りになるのは他の感覚です。手で触って位置を確認します。耳をすまして人の気配を探ります。動きに対して敏感になります。一つの感覚を失うと他のあらゆる感覚を使って補おうとしていることがよく分かりました。

 すべての感覚は自分自身と他者について知覚します。
 又、一つ一つの感覚の発達は個人によって差があります。また、一人の人間の中にも優れている感覚と劣っている感覚があります。私たちは、自分自身の感覚の弱いところを育てたいと思います。子どもたちにはすべての感覚がバランスよく育ってほしいと思います。それには次の3つのことが必要だといわれます。

①それぞれの感覚を理解する
 それぞれの感覚はどういうものか。どういう機能があるのかを理解すること。

②感覚を育てるという意識を持つ
 たとえば、ロックミュージックのようなうるさい音楽が一日中聞こえてくる環境に育つと、子どもは聴覚にダメージを受けます。また、今日、味覚も科学調味料や添加物の食べ物によってダメージを受けています。このようにすべての感覚が今日の文明によってダメージを受けていることに気づく必要があります。

③感覚を育てる
 すべての感覚は未完成です。大人になっても育てて行く必要があります。しかし、ただ一つの感覚を発達させるとバランスが取れなくなってしまいます。3歳からバイオリンを一日何時間も弾かせたりすると、運動感覚が育たなくなってしまいます。テニスプレーヤーに育てようとして、テニスばかりさせているとその他の感覚が育ちません。タインさんは、現在では大人も子どもも感覚が一面的に偏っている傾向があると述べておられました。
   
(自我こそはすべての感覚の教育者)
 動物は感覚を使うことは出来ますが育てることは出来ません。動物は自我がないためできないのです。人間だけが自我によって感覚を育てることが出来るのです。感覚を害するものを食い止めることもできます。バーバラ氏は、自我こそはすべての感覚の教育者だと述べておられます。そして、自我は他の感覚によって教育されるのですと。


それでは一つ一つの感覚について詳しく見ていきましょう。
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by higuchi1108 | 2006-11-04 13:18 | 12感覚

12の感覚を学ぶ


                        1、下位感覚

1、触覚
☆触覚は外の世界を知り、自分自身を知る感覚です。同時に外の世界と自分との境界線を感じる感覚です。

 触覚の器官は皮膚です。皮膚は体の全部に広がっています。
裸になって、まったく知らない真っ暗な部屋に入って行ったとイメージします。すべての感覚を遮断したとき触覚が理解できます。

 真っ暗闇で何かに触ると、緊張感を伴い抵抗感が感じられます。外からやってくるものに押されているように感じます。そしてそのものに対して押し返します。赤ちゃんはどこからどこまでが自分の足なのか手なのか最初は分かっていないといいます。生まれたばかりの赤ちゃんを裸にしてお風呂に入れるとき、びっくりしたようにビクッとなって手足を硬くして緊張します。あわててガーゼの布を体にかけてあげたことを思い出します。すると安心してお湯の中でとても気持ちよさそうにしていました。赤ちゃんは触覚によって自分と周囲との境界を長い時間をかけて学んでいくのだそうです。ですから赤ちゃんをおくるみで包んであげなければ、輪郭がつかめず不安感につながります。

 私たちは触覚によって外の世界を知り、自分自身を知っていきます。それと同時に触覚を通して自分自身の境界、他者との境界も知っていくのです。
 幼児期に触覚が十分育たなかった子どもは社会性に影響を及ぼし、他者との関係を作るのが非常に困難になるそうです。心理的な面でも問題を持つようになり自分が幸せでないと感じます。触覚が十分育たないと多動になったり、不安症になったりします。

 触覚にダメージがあるとこんなにも深刻な問題を抱え込むことになるのですね。大きくなればなるほど触覚を育むことは難しくなるように思います。生まれると同時に育てていかなければならない感覚であることをしっかり認識したいと思います。


2、生命感覚
☆ 私たちの身体の状態がよい状態なのか、悪い状態なのかを知らせてくれる感覚です。

 生命感覚を通して、具合のいいとき、悪いときを感じとります。また、お腹がすいた、喉が渇いたということも教えてくれます。生命感覚の器官は体全体にいきわたっています。生命感覚が自分の体の調子を教えてくれることによってそれに対処することが出来ます。生命感覚は生命を維持するために欠かせない大切な感覚です。

 生命感覚が機能しないで生まれてくる子どものことが新聞に出ていたそうです。その子は一人でいる時ローソクに火をつけてあそんでいて、ローソクの炎の中に指を突っ込んでしまいました。その子は痛みも何にも感じることが出来なかったため悲惨な事故になったとのことでした。本当に生命感覚がないと生命に危険が及ぶのですね。
生命感覚が第一に教えてくれるものは 飢え、のどの渇き、危険についてです。

 生命感覚の現われは痛みです。痛みを通して私たちに知らせてくれます。痛みを感じたら体の中に何か正常でないことが起こっているということです。
生命感覚は警報システムのようなものなのですね。タインさんは、食べ過ぎると胃が痛みます。その次には食べ過ぎないようにしようと考えることができます。私たちは痛みから学ぶのですと述べておられました。

 今日では痛みを避けようとする傾向があるとタインさんはいいます。
 現在は非常に過保護です。大地で子どもたちを遊ばせません。汚いからといって泥んこで遊んだり、危ないからといって木登りしたりするのを禁じます。子どもに痛みを感じることをさせなくなっています。
 また、子どもたちは体を動かして遊ばなくなっています。多くの子どもは一日中テレビをみたりして、体を使って疲れるまであそぶことをあまりしません。
 子どもの肥満、想像力の欠いた子どもが増えてきているのも生命感覚が健康でない状態を示しています。

 タインさんは、大人も同じように世界的に痛みを嫌がり楽なことを求めているといいます。
 
 またタインさんは、努力をして何かを成し遂げたとき達成感が得られます。この達成感は生命感覚が持っている対極のものだといいます。痛みを伴って努力しその後に達成感があるのです。また、痛みを感じる心があれば、他者の痛みに思いをはせることが出来ますと。本当にそうですね。悲しみや苦しみに出会わなければ、他者の苦しみも悲しみも決して理解できないでしょうから。

 時代を超えて語り継がれたお話は子どもたちの生命感覚に働きかけるのだそうです。しかし、昔話の中の残酷な場面を書き直して子どもに与えているとしたらどうでしょう。どきどきする怖い場面でも深い意味が隠されているといいます。昔話はすべて調和的に構成されていて素晴らしいバランスがあるのだそうです。ディズニーのお話のように残酷な場面を省いて、ただ夢見るようなお話にしてしまったら、そのお話の中に隠された叡智が無くなってしまいます。怖い、残酷と思えるような、また、悲しい辛いお話は子どもにはふさわしくないという意見もありますが、私は子どもたちが空腹や喉の渇きを感じなければならないのと同じように、昔話の中の空腹や喉の渇きを通り抜けることを体験させることが大切だと思います。そのことを通して生命感覚を養うことが出来るのですから。


3、運動感覚
☆ 運動感覚は自分の体を動かす能力ではなく、自分の体が動いている、あるいはじっとしているということを感じる感覚です。

 運動感覚は自分の動きを感じると同時に他の人や物の動きも感じます。運動感覚は一般的には筋肉が感じる動きだといわれていますが、タインさんは動きとは私(自我)が体を動かせているのです。私が動きをコントロールしているのですと言われます。

 毎日、A町からからB町へ行く男がいます。彼が何故、A町からB町へ行くのか知りたいと思いました。彼の体をくまなく調べます。呼吸の仕方、汗の分泌、血圧…。風力や気温、歩く速度も調べます。限りなく調べても、彼が何故A町からB町へ行くのか知ることが出来ません。そこで視点を変えて彼の友人に聞いて見ました。すると「B町には彼の恋人がいるのさ。」という答えが返ってきました。彼には内的な意図があったのです。だから彼はそこへ行くのです。意図をもった彼は、B町へ行く前にもうすでにそこへ行っています。人間は動くとき必ず意図を持っています。

 動きにはカップを持って水を飲むことや2階へ上がるなどの小さな動きから、遠くへ出かけるなどの大きな動きがあります。また、人生においてこの人に出会った、この職業についたという人生の中の大きな動きもあります。私たちが偶然と呼んでいる出来事は私たちが出会いたいと望んだからこそ与えられたものなのです。

 タインさんは、大きな意味での動きを理解することは私たちの人生の動きを理解することだといわれます。運動感覚が人生の動きを理解することにつながるなんてすごいですね。考えてみればどんなに小さな動きでも自分がこうしようという意図を持って動いているのです。それが積み重なると私の人生に繋がっていくのですね。今回、運動感覚を学んで、「私が自分の人生を作っているのだ」ということをあらためて認識しました。子どもたちにとっても運動感覚を養うことが人生を切り開いていくための力になるのです。


4、平衡感覚
☆体のバランスを取る感覚です。平衡感覚は精神のバランスにも結びついています。

 触覚と生命感覚は、ほとんど一緒に働いています。硬いものや冷たいものを触ったとき、もうすでに心地よくないと感じます。生命感覚とつなぎ合わせたように使います。
 運動感覚と平衡感覚もほぼ同時に働いています。
 片足を上げて立っていようとするとバランスを崩します。もう一方の足を一歩踏み出すとバランスを取り戻します。歩くことは、バランスを崩して、また取り戻しての繰り返しを行っているのだといわれます。バランスを取るということは、自分と外との間に均衡をとるということです。バランス感覚がなくなれば、右、左、上、下という空間が分からなくなります。

 平衡感覚の器官は内耳にある三半規管です。この器官を通して3次元の中でのすべての方向がわかります。私たちは宇宙飛行士のように空中に浮かんでいるときにはバランスを取ることができません。バランスを取るためにはしっかり大地に足をつけていなければなりません。

 タインさんは、精神的なバランスを取るためには自分自身の中心を持つ必要があるといわれます。これは自分自身の自我と結びついているのだそうです。自我が自分の中にしっかりといて、自分の中心を持って立つ人がバランスの取れた人です。自分が中心にいると他者と結びつくときエゴイストになりません。バランスの取れた人は社会的な人です。これは平衡感覚が働いているからなのだそうです。

 これらの4つの感覚、触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚をシュタイナーは身体的、肉体的な感覚と名づけました。なぜなら、それらは私たちの身体についての知恵と知識を教えてくれる感覚だからです。

 この4つの下位感覚は発達の土台になる感覚で、4つの下位感覚なしに健康な人になることは難しいといわれます。
この下位感覚が育たないとどんな問題がおこるのか、下位感覚を育てるためにはどのようなことをすればいいのかをみていきたいと思います。

《触覚、生命感覚が育たないと》
 触覚が十分育たないと、自分の確かさが得られなくなり不安や恐怖といった感情を持ちます。心配性の子どもは触覚の未発達に関係しています。生命感覚も同時に未発達です。
心配症の子どもは女の子に多く見られます。自信がなくいつも怖がります。特に夕方から夜にかけて、寝る前が一番怖がります。安心感がなくいつもお母さんにまとわりついています。
男の子の場合は、多動になり攻撃的になる子どもが多くいます。
不安をもっているので自分自身を満たすことができません。いつも動き回り、たえずしゃべっています。

 このような子どもたちに大人が出来ることは、子どもを理解し、いつも大丈夫かと気遣ってあげること、大人が彼らを認めてあげることが大切だといわれます。

 また、芸術的な活動をすることも癒しになるのだそうです。粘土あそびや庭仕事、歌うことなどです。生活の中にリズムを持たせることも安心感をもたらします。毎日、毎日同じことを繰り返すことも安心感につながります。暖かさや自然食の食事、十分な睡眠、居心地のよい場所、着心地のよい服を着せるなども大切です。

 生後何ヶ月間の間、十分に触ってもらえずに育てられた子どもは、4歳~5歳ごろになって心配性や多動といった症状が出てきます。そのようなときに触覚と生命感覚を通して働きかけるプログラムをタインさんより学びました。このプログラムはお母さんが夕方から行うものです。

(触覚と生命感覚に働きかけるプログラム)
4時~5時
 子どもの活動として粘土をして遊びます。大きい玉と小さい玉を二つ作ります。大きい方の玉の真ん中をへこませて鳥の巣を作ります。小さい方の玉で小鳥を作ります。小さい小鳥を巣の中に入れてあげます。この活動を通して触覚を感じ安心感を与えます。家を作ってその中に赤ちゃんを入れてあげる。洞穴に熊を入れるといったことでもかまいません。

5時~5時30分
 子どもをひざの上に抱いて、昔話を聞かせます。主人公が困難に出会って、最後には幸せになるようなお話がいいのです。

5時30分~6時30分
 お母さんは夕食の準備をします。子どもはお母さんの側で絵を描いたりして遊んでいます。
夕食は、出来るだけ消化のよいもの与えます。

7時~ 
眠りの準備をします。
 足湯につからせます。足を包んであげてマッサージをしてあげます。これらをしている間、歌を歌ったりハミングをしたりしてリラックスさせます。最後にオイルを塗ってあげます。

治癒的効果のあるゲームをします。
 目を閉じて、どんぐりや松ぼっくりなどを足で触らせて、それが何であるかを当てるゲーム。点数をつけて面白くしてもいいです。
 お手玉を頭の上に乗せてバランスをとるゲーム。いすの上からジャンプするゲームなどをします。

 寝かせるときは、おしゃべりをしたり、歌をうたったり、最後にお祈りをします。

 毎日毎日同じリズムを繰り返すことが安心感につながります。お話も同じ話を何週間も続けてします。

 このプログラムは多動で落ち着きのない子にもよい方法です。違う点は、子どもとの会話の内容です。
 不安症の子どもは明日のことを話します。不安症の子どもは変化を嫌います。過去は安心していられるのでそれに執着するのです。新しいことにオープンにしてあげるために明日のことを話します。
「明日、朝起きたら、ピンクの服を着ようね。学校から帰ったら友達を呼ぼうね。」…など詳しく話します。

 多動の子どもには過去のことを話します。朝から夜までの出来事を詳しく話します。「今日のご飯は卵焼きだったね。さっきのゲームで3点取ったね。…等」
多動の子は、一箇所に留まるのがいやなので一つのところにとどめる必要があるのです。一日の中でよかったことを話してあげます。自分自身に誇りが持てるようにします。

 最後にタインさんは、もっとも大切なことはお母さんが決して急がず穏やかでいることですと述べておられました。子育てまっ只中のお母さんが、いつも急がず穏やかでいることは並大抵ではできません。私自身も子育て中は、いつも急がせていたし、穏やかでいられないことだらけでした。「難しい!」自分のあり方を反省し「次はかんばろう」と思うことからはじめたいですね。
このプログラムは心配性の子どもや多動の子どもだけではなく、すべての子どもの触覚を育てるのにもとても有効なものだと感じました。

 
《触覚、生命感覚を育てるには》
① 大人が愛をこめて触ってあげること。
 触ってもらって心地よいと感じる感覚は同時に生命感覚も育てます。触り方が極端に強い場合は身体的な虐待になります。まったく触らないのは無視につながります。子どもに触る時はバランスが取れている必要があります。やさしく愛をこめて触ってあげることによって、触覚、生命感覚は育つのです。

② 触り心地のよい、自然の素材に触れること。
 子どもに与えるおもちゃが生命のないプラスチックや人工的な素材であったり、身につける物も化学繊維や着心地の悪い物であったらよい感情は育ちません。良いものに触れることによって触覚は育つのです。

③ 決まった場所に同じものがあり、何度も触ること。
 いつも同じものがいつもそこにあることや、何度も何度も触ることによって確かさを育てます。いつも自分のそばにあるという体験は確かさを育てるのです。その場合、おもちゃがたくさんあり過ぎるのはよくありません。

④ 物を丁寧に扱うこと。
 物も丁寧に触ることが大切です。物を乱暴に扱うようなことをすれば子どもに影響を及ぼします。

⑤ 身体を触ってあげるような、わらべ歌や手遊びゲーム遊びを取り入れます。

⑥ リズムのある生活をします。一日の生活が規則正しいリズムであることが大切です。
 
 こ6つのことは、どれも当たり前のことなのですが出来ていないことだらけです。

①の「大人が愛をもって触ってあげる」
 昔は、どこへ行くのもおんぶされていつもお母さんと触れ合っていました。今はバギーという便利なものが出来たため一人で座らされています。ミルクを飲ませるのもテレビを見ながら飲ませているお母さんが大半をしめていると聞きます。

②の「さわり心地の良い自然の素材に触れる」
 今はプラスチックのおもちゃがあふれています。子どもに着せる服もファッション性を優先し、着心地の良いものを選ばない傾向にあります。

③の「決まった場所に同じものがあり、何度も触ること」
 おもちゃが山のようにあり、片付けるときも一つの大きな箱に詰め込んだりします。我が家もそうでした。子どもが喜ぶので色んな人がついつい買い与えてしまいます。どこに何があるのかも分からなくなり最後には壊れてごみのようになっていました。おもちゃは大きな箱に詰め込むのではなく、いつも決まった棚に片付けること。これだけでも実行したいですね。
小さい子はたいていお気に入りの毛布やタオルがあり、もう汚くてぼろぼろになっているのにそれを欲しがります。保育園になかなか慣れない子どもは、家からお気に入りのタオルを持ってきてもらっていたことがあります。いつも同じものを触ることって本当に安心感につながるのですね。

④の「物を丁寧に扱うこと」
 今の消費社会にあって、物を大切に丁寧に扱うことが本当に少なくなっています。「使い捨て」時代をなんとか食い止めたいものです。

⑤の「身体を触ってあげるような、わらべ歌や手遊び、ゲーム遊びをする」
 わらべ歌や手遊びなどは、おじいちゃんやおばあちゃんから教わることがほとんどなくなったため、一般的な家庭では廃れつつあります。これらを伝承していくには保育園や幼稚園の役割が大きいと思います。保育士が学び実践していくことが求められます。

⑥の「リズムのある生活をする。一日の生活が規則正しいリズムであること。」
 夜9時までに寝る子どもが少なくなっていると聞きます。夜の12時までも平気で起きているそうです。居酒屋にお子様メニューがあるのにびっくりしたことがあります。お酒を飲む場所に子どもを連れて行く時代なんですね。

 今の私たちの生活は、触覚や生命感覚を脅かすものだらけです。触覚や生命感覚の大切さを認識し、家庭や保育の場でこの2つの感覚が健やかに育まれるように改善していきたいものです。

《運動感覚と平衡感覚が育たないで起こる問題》
 タインさんは、体におきていることは心の中でもおきているといいます。子どもが直立して歩けるようになったとき、とても誇らしげに振舞います。バランスを取って歩けるようになると自分は素晴らしいんだという感情が生まれます。そのことが自信を持つことを助けるのだそうです。内的なバランスとは自分を信頼することですと。

 子どもは大人の動きを模倣します。運動感覚がダメージを受けていると模倣することができません。子どものあそびは、大人の動きを真似て自分のものにして、自分のやり方でやってみせることです。動きを真似ることが出来ない子どもは遊べないため、他の子どもとも遊ぶことができません。その結果、落ち込み、孤独、ふさぎこむといった態度が見られます。
  
 触角と生命感覚の場合と同じように運動感覚や平衡感覚が未発達の子どもも、自分への評価が低く自信がありません。多動であったり、心配性になったり、いつも不安です。一人ぼっちで落ち込んでいます。

《運動感覚・平衡感覚を育てるには》
① 床拭き、窓拭き、洗濯、配膳、料理、園芸といった実生活に関わる仕事をすること。
② 自動車や電車に乗らず、歩く習慣をつけさせること。
③ 過保護にならないようにチャレンジさせること。木登り、階段の上り下り。飛び石、ボール投   げ、お手玉あそび、クラフト、手仕事、縄跳び、のこぎりで木を切るなど。
④ あまり早くからスポーツをさせないこと。スポーツは遊びと違って偏った運動になってしま   うため。
 
 これらのことも当たり前のことなのに出来ていないのが現状です。子どもに家事を手伝わせることが少ないですし、子どもも大人と同様、運動不足です。
運動させるというと偏った動きのスポーツをさせてしまいます。昔の子どもはほっておいても様々な遊びを通して運動感覚も平衡感覚も発達させることが出来ました。今では子どもが生き生きとした遊びができるようになるには大人の手助けが必要な時代です。地域社会との連携も必要ですね
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by higuchi1108 | 2006-11-04 13:14 | 12感覚

12の感覚を学ぶ

                      2 中位感覚

 嗅覚、視覚、味覚、熱感覚の4つです。感情の感覚とよばれ、自然(周囲)を知覚する感覚です。

5、嗅覚
☆ 匂いを感じる感覚です。

 私たちはいい匂いを嗅いだときやいやな匂いを嗅いだとき、バラの花の匂いとか苦い薬のような匂いと表現します。匂いに対して直接名前を付けたものはありません。嗅覚を表すのには他の名前を使います。
 また、鼻をつままないかぎり匂いを嗅がないでいることはできません。これらは、嗅覚の持つ不思議な特徴です。嗅覚は、味覚、視覚、熱感覚などと一緒で私たちにどんな感情を持つのかを教えてくれます。感情の感覚は、自分の感情を通して世界がどうなっているかを教えてくれるのです。
 もう一つの嗅覚の特徴は、すぐに直接的に、いい匂いか、いやな匂いかを感じます。そして常に私たちに判断をさせるように働きかけます。

 嗅覚の感覚器官は鼻です。鼻の粘膜を刺激して脳に伝えます。脳に結びつくのに一番近い感覚です。
 犬の嗅覚は人間と比べてはるかにすぐれた能力を持っています。鮭は自分が生まれた川にどんなに遠く離れていても戻ってきます。それは嗅覚によるものです。犬や鮭は本能によって動かされているのです。動物はすべてが本能で動き自分で決めることはできません。

 タインさんは、私たちにとっても嗅覚は本能の要素を持っていると述べておられました。
 食べ物がいやな匂いを放っていると「これは腐っている。」ということを教えてくれます。 また、嗅覚を発達させると、どんなに着飾った服を着ていても、「この人は、どうも、うさん臭い。」と本能的によい人かどうか嗅ぎ分けることもできます。私たちは、嗅覚の道徳的な側面を通して、何が善であるか何が悪であるかを嗅ぎ分ける訓練をしていくこともできるのですと。


6、味覚
  ☆食べ物の味を知覚する感覚です。

 味覚の器官は舌です。舌は口の中に入っています。食べ物を食べようとすると口を開いて中に入れなければなりません。口は門で唇はドアのような働きです。嗅覚はいつもオープンですが、味覚は口を開けないと決して入ってきません。舌の上に食べ物をのせたときから消化のプロセスが始まります。外的なものを体内に取り込み自分の体の一部にします。

 私たちは、食べ物を食べたときおいしいか、まずいかを感じます。しかし、味覚は本来、私たちに食べたものが体によいものかどうかを教えてくれる器官なのです。味覚がなかったら、自分の体によいものか悪いものか見分けることが出来ません。病気などで味覚を失うととても危険です。

 タイン氏は、現在の私たちは味覚を本来のあり方ではなく、おいしいか、まずいのかということに使っているといいます。そして、今は人工的な調味料で味付けされているため、体によいものか悪いものかを区別することができなくなっていると。体を健やかに育てようとするなら本来の味覚の機能を取り戻さなければなりません。子どもを養う大人が本来の味覚を失くしているのでは、子どもの感覚も損なわれてしまいます。

 味覚には4つの性質があります。しょっぱい味は意識を目覚めさせてくれます。すっぱさはリフレッシュさせてくれます。苦さは意志に反発して働きかけます。甘さは人生を味わい心地よい存在にしてくれます。
この中でも苦味は大切なものなのだそうです。苦いものは喜びをもって口には入れません。子どもは苦いものを口にするとき意志の力が必要です。人生にとっても苦い経験はいやなものです。しかし苦い体験も人生には必要ですものね。

 よい食べ物は、体の中に入ると栄養になります。心にとっての栄養は、食べるものを美しく並べたり、お箸やフォークやスプーンを使って食べたり、皆が集い分かち合って食べたりすることによってもたらされます。これは社会的な営みです。


7、視覚
 ☆目を通して世界を知る感覚です。

 視覚はあらゆる感覚を助けています。今では視覚が他の感覚をのっとっているとも言われます。視覚の器官は目です。光がなければ私たちは見ることができません。目は脳から切り離されました。光が目に反射して目の神経を刺激し脳に届くのです。目の器官は脳もあげることが出来るのだそうです。

 目にとって見るということは色がわかることです。視覚は色と結びついています。
何故、私たちは色を見ることができるのでしょうか。
 ニュートンは、光の中に7つの色があってプリズムで分けてみることができるといいました。たとえば青色は、光の中にある一色、青色を取り出して見ているというふうに考えました。
 それに対して、ゲーテやシュタイナーは闇がないところには色はできない。色というものは光と闇が交差するときに出来るのだといいました。光と闇が交差するとき、光が強いときには赤、オレンジ、黄色が見え、闇が強いときには、青、紫といった色が見えます。色は本来、色同士が流れ交じり合っています。色が織り成しあっていろいろな色を私たちに見せてくれているのです。眼球の中の水晶の中に虹の幕があり、そこで闇と光が織り成し合い色を見ることができます。

 色は又、心の窓です。赤を見るとエネルギッシュな感じがします。黄色はうきうきする感じ、青は沈んだ感じを持ちます。
色については、シュタイナーやゲーテの色彩論を学ぶとより理解が深まると思っています。何故幼い子どもには、にじみ絵を描かせるのかといったことも勉強したいと思っています。

8、熱感覚
 ☆熱いか冷たいかを知覚する感覚です。

 熱い水と冷たい水に片手ずつ浸し、すぐに生温いお湯に両方の手をつけると同じ温度であるのに、熱い水の中につけた手は冷たいと感じ、冷たい水に浸した手は暖かいと感じます。しばらくそのままつけていると同じ温度に感じるようになります。熱はいつも流れていて拡散し広がっていきます。その反対に冷たさは収縮し縮こまります。熱は暖かいところから冷たいところへ流れていきます。冷たく感じるのは自分の熱が冷たいところへ流れていって、冷たさを感じるのです。
 熱感覚というのは、熱い、冷たいを感じる感覚なのです。

 タインさんは、暖かさは広がって私たちを引き寄せるといいます。関心や情熱というのは熱だといわれます。憎しみ、知りたくない、もういやだという感情は冷たさです。私たちは、他人に暖かさを与えます。他人から暖かさを得ることを望みます。十分な暖かさがないと心が冷たくなり興味や関心を持つことができません。暖かさは世の中に対する好奇心、情熱をもたらすのですと。

《中位感覚の妨げになるもの》
 嗅覚
  人工的な匂い(公害、たばこ、香水)、車の排気ガス、大気汚染

 味覚
  化学調味料、コーラ、添加物の入った食べ物、忙しない食事時間、テレビを見ながらの食事

 視覚 
 派手な看板、広告写真、刺激の多い雑誌、子どもが小さいときから車や電車に乗る。(短い 時間にさーと物が通り過ぎてしまいじっくり見るということをしなくなる。)、テレビ(じっと見ているときは、眼球を動かしません。)、蛍光灯(新しいトンネルの中に蛍光灯を取り付けたところ、事故が多くなったという報告があるそうです。目の痙攣を起こしたそうです。可能な限り自然な光を取り入れることが大切です。)

熱感覚
 化学繊維の服、不健康な服、(寒いときでも暖かな服を着ない)、空調の利きすぎで冷たすぎる部屋になったり、暑すぎる部屋になったりする。

 これらのことは、文明社会に生きている限り影響を受けてしまいます。しかし子どもたちには、環境を整えることによって悪い影響を出来るだけ受けないように気をつけてあげることが必要ですね。

《中位感覚を育てるには》
嗅覚
 家の中を美しく掃除する、木を植える、料理をする(家庭的な匂い)、花を植える、菜園をする、自然の中を散歩する、洗濯された服を着るなど。周りの環境を整えると幸せを感じ、心地よさを感じ、健康であると感じます。

味覚
 家庭で健康的な料理を作る、冷た過ぎる食べ物を与えない、生の食べ物は控える、食事時間が決まっていること、美しく食卓を整える、子どもには食べ物を選ばせない。

視覚
 最も危険なものはテレビを見ること。テレビを見ることを避けるため、創造的な活動に誘うようにする。家庭や保育室、教室が美しく整っていること。色も明るすぎない、やさしく調和のある色を使う。暗く、濃い色やにごった色は使わない。自然の中を散歩して、日の出や日の入りの美しい色を見る。健康的な眠りも目のために助けになる。教師の服の色やおもちゃの色に気を配る。絵を描いたり園芸をしたりお花を生けたりする。色や形を体験できるようなゲーム遊びをする。

熱感覚
 暖かい環境、暖かい雰囲気、大人の暖かい態度が熱感覚を育てます。

 中位感覚で私たちは自分の内面と外面を感じます。外の世界に関心をもって様々なことを感じると同時に、自分がどんな感情を持っているのかを感じるのです。タインさんは、この中位感覚を育てるのにいいのは芸術的な活動だと述べておられました。芸術活動はこの4つの感覚を育て心を豊かにします。
 これらの中位感覚の危機に治癒的に働きかけるのが芸術活動ですと。シュタイナー学校で芸術活動に力を入れているのは中位感覚を育てるという意味があったのですね。
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by higuchi1108 | 2006-11-04 13:02 | 12感覚

12の感覚を学ぶ

3 上位感覚 

 聴覚、言語感覚、思考感覚、自我感覚の4つです。この上位感覚は、精神的な、あるいは社会的な感覚といわれています。私たちがこの社会で人と交わるときに使うものです。

9、聴覚
 何かを聞くとき耳が関係します。聞く器官は耳です。
音が出るためには硬さが必要です。大地に属したものが大地からとりだされて、空中に浮いた状態でぶつかり合う時、きれいな音が出ます。音が出るとき空気中に振動が起こります。その振動が耳に伝わり音として認識するのです。

 耳の器官の外耳はメガホンの役割です。耳の奥(内耳)に、三半規管があり蝸牛があります。この部分で音を認識するのですが、ここで物質的な音を精神的な音に変えるのだそうです。
精神的な音とはどういうことなのでしょう。音楽のメロディーについて考えてみます。音楽のメロディーを聞くことができるのは、音と音の間を聞いているからメロディーになるのであって、一つ一つの音だけを取り出していたのでは私たちは音楽を楽しむことはできません。これはドの音だ、これはミの音というふうには考えません。私たちは、聞いた音をいったん消します。聞いた物質的な音(ド、レ、ミ)をいったん消し去って精神的な音(メロディーを聞くということ)に変容するのです。

 音楽は、深いところで私たちに影響を与えるといわれます。音楽は私たちの心を豊かにし心にバランスをもたらします。しかし、また、音楽は一歩間違えると悪い力を人に及ぼす場合もあります。音楽のもつ力を利用して疲弊のきわみにある兵隊をさらに行進させることも出来るのです。

 また、録音された音楽には、演奏する人の精神が含まれません。精神は録音することが出来ないのです。そこには物質的な音を精神的な音に変容させるというプロセスが半分しか機能しません。演奏する人の精神はいつも生きていて動いていているものなので、CDやカセットなどの機械音では精神が入ることは出来ないのです。シュタイナー教育では、マイクを通して生徒に話しをしたり、CDの音楽を聞かせたりしないと聞きます。音楽家のように上手に演奏できなくても、教師自身が、楽器を弾き、歌をうたい、語りかけることが大切とされています。

 本当に聞き入るために欠かすことが出来ない前提条件として「静けさ」があります。今の私たちの生活に静けさが無くなっています。
ズスマン氏は、人間の耳は馬のように自在に動かすことができません。馬が自在に耳を動かすことが出来るのは、耳を澄まして聞くことができないからです。まさに、人間は耳を澄まして聞くために耳を動かす能力を捨てたのです。と述べておられました。今の子どもたちは耳を澄まして聞くということが苦手になっています。見ているわけでもないのにテレビの音がずっと聞こえていたりします。絶えずいろいろな音が聞こえる環境では「耳を澄ます」ことができません。耳を澄まして聞くためには「静けさ」が必要です。日常の生活の中に、静かに鳥の声や風の音に耳を澄ますような余裕を持ちたいものです。そのことを通して、人の話も耳を澄まして聞くことができるようになると思います。

10、言語感覚
 聴覚では、その人が言っていることを理解することは出来ません。言葉の意味は言語感覚を通して理解できます。

音楽を聞くのと言葉を聞くのとでは違いがあるといいます。言葉には音楽的な要素がないのです。

 私たちは文書を作り出すことは出来ますが言葉を作り出すことは出来ません。生きている言葉は作ることが出来ません。日本にも昔から「言霊」という言葉がありますがそんなに簡単に人間が作れるようなものではないのですね。世界の共通語を作ろうとヨーロッパでエスペランド語というものを作ったそうですが、普及しなかったと聞きます。その言葉は生きた言葉ではなく約束事の集大成でしかなかったからだとタインさんは述べておられました。

運動感覚が発達して言語感覚になります。
 小さい子どもは動くことで言葉を覚えます。あまり動かない子どもは、話すことに困難を抱えている場合が多いのです。小さい子どもは動きでうれしいとか悲しいといった感情を表します。それが言葉の母音になります。感情以外のもの、たとえば物を指差すとかという動きは子音になります。

 聴覚には音楽を聞き取る感覚と言葉を聞き取る感覚があるのだそうです。言葉を理解するためには、音楽的な要素をすべて消し去らなければなりません。音楽的な要素を消し去って言葉だけを取り出し、その言葉の意味を理解するのが言語感覚です。そこには「消し去る」という犠牲的な要素があります。他者が言っていることを理解するために犠牲を払うのです。

《言語感覚の妨げになるもの》
 最近では、テレビの影響がとても強いです。テレビの画面で人はひっきりなしに意味のない言葉をしゃべり続けます。メールや携帯電話などが普及し、人と人が対面してしゃべることが少なくなってきています。対面してしゃべらないので動きがありません。

《言語感覚を発達させるには》
 物語や詩を語って聞かせること。わらべ歌を聞かせる。先生や周りの大人の声が生き生きとしたものであること。自分の感情を身振りをつけて表す演劇も大切です。早口言葉も有効です。


11、思考感覚
 思考感覚は、他者の話す言葉の背後にある意味を理解するものです。

 私たちは、自分の考えを言葉を通してしかあらすことは出来ません。しかし言葉を通してあらわしてもまったく正確にあらわすことはできません。
何故完璧に言葉を通して自分の考えをあらわすことが出来ないのでしょうか。タインさんは、言葉は物質的なものだから出来ないのだといいます。思考は精神(内的なもの)に属しています。思考や理念というのは言葉ではない内的なものです。

相手が話していることを理解するプロセスは
 まず、空気中の振動から伝わってきた音を聞きます。聞いたものの中から音楽的なものを消し去り、言語的なものだけを取り出します。このとき言語感覚が働きます。次に言葉の背後の考えを理解するには言葉を消し去らなければなりません。言葉をいったん消し去って、相手の言おうとしていることを理解するのです。

思考感覚は、生命感覚を通して発達します。
 生命感覚は自分の体調がいいか悪いかを判断する感覚です。他者の考えを理解するためには、自分自身の考えをいったん消さなければなりません。
自分自身を生命感覚を通してしっかり持つこと。その後で自分自身を犠牲にして、他者の考えを理解するのです。自分自身がしっかりないと自分を消し去ることはできません。自分自身を感じる感覚を犠牲にして他者の考えを理解するのです。

《思考感覚の妨げになるもの》
 ・あまりにも早い時期に読み書きを覚えること。
 ・大人たちが、意味のない話をずっとし続けること。
 ・家でも学校でも、あらゆることに指示されること。

《思考感覚が育たなかったとき》
 ・他者の考えに依存し、自分の考えが持てない。
 ・固定観念を持ちやすい。
 ・物事に執着する。
 ・嘘をつく。

《思考感覚を育てるには》
 思考感覚は生命感覚と結びついているので、生命感覚を養うことによって育てることができます。
 ・自然のなかであそぶ。
 ・リズムのある生活をする。
 ・昔話を語り聞かせる。
 ・なぞなぞあそびをする。

 他者を理解するこの思考感覚は、社会的な生活を営む上で重要な感覚です。


12、自我感覚
  自我感覚は自分の自我を感じる感覚ではなく、他者の自我を感じる感覚です。

 聴覚で音を聞きます。言語感覚で音楽的な要素を消し去り言葉を理解します。
思考感覚で、言葉の背後にある意味を理解します。しかし、思考感覚では、その人の本質はわかりません。自我感覚を通してその人の本質が分かるのです。

 自我感覚は触覚を通して発達します。
触覚を通して他者と自分との境界を感じます。外との境界は皮膚です。内側で安心していられるのは境界が硬いからです。内側で安心しているときは外と接触を持ちません。他者を理解したいときはその境界を出ないといけません。自分を犠牲にするのです。そのためには触覚が育っていなければなりません。触覚を通して安心感を身につけ、そして自分を差し出すのです。自分を消し去って相手の中に入りこみ一体となることで相手の本質を理解するのです。

 タインさんは、この自我感覚は私たちにとって、もっとも未発達なものですと述べておられました。精神的成長は困難なものです。私たちは修練していく必要があるのですと。

 この上位感覚を学び、上位感覚を育てるためには下位感覚が土台となっていることを知りました。他者のことを理解するためには下位感覚がしっかり育っていないと上位感覚を育てることがとても困難なのです。

 神戸で小学生を殺した少年のことを思い出します。彼は留置場で、「自分は透明人間だ。私は存在していないと感じる。」と言ったそうです。「自分はここにいる。」ということが分かるのは触覚の力です。彼は触覚が未発達だったのですね。そのため、自分のことも他人のことも理解することが出来ませんでした。いつも不安で、恐怖におののき、孤独で、幸せと感じることがなかったのです。

 下位感覚が成熟していく時期は0歳~7歳です。この時期の子どもの感覚の育ちがどんなに大切なものか実感しました。今、人との関係を作るのが苦手な人や他人を理解することが困難な人が増えているのも、この下位感覚が十分育ちきれていないことが原因なのかも知れません。今のようにテクノロジーが発達した社会では意識して育てようとしないかぎり、すべての感覚は正常に発達しないことを痛感しました。家庭や保育の場で感覚を育てることに意識を向けて、育児や保育に取り組まなければならないと強く思いました。

 タインさんの講座のあと、引き続いてリサ・ロメロ氏の講義があり12感覚をもう一度聞くことができました。その中でも12感覚はそれぞれ育つ時期があるということです。タインさんから下位感覚(意思の感覚)は0歳~7歳、中位感覚(感情の感覚)は7歳~14歳、上位感覚(思考の感覚)は14歳~21歳に育つことは伝えられていました。今回、リサさんからは、もっと詳しく一つ一つの感覚が成熟する時期を教わりました。それは次のようなものです。
 ・触覚 … 0歳~2,3歳
 ・生命感覚…2,3歳~4歳
 ・運動感覚…4歳~5,6歳
 ・平衡感覚…5,6歳~7歳
 ・嗅覚  …7歳~8歳
 ・味覚 … 8歳~9歳
 ・視覚 … 9歳~14歳
 ・熱感覚… 14歳~16歳
 ・聴覚、言語感覚、思考感覚、自我感覚…16歳~

 触覚は、生まれてから2,3年で成熟します。
 自分自身で境界線を確かめられるようになるまで周りの大人が触ってあげる必要があるといいます。確かに触覚が成熟する頃、手足が長くなり全身を触ることが出来るようになります。また、お母さんから少し離れて外へ出て行くこともできます。また、自我が生まれてきて反抗するようにもなります。触覚が育つと自分を認識することができ自我が育つのですね。

生命感覚は、4歳ごろ成熟します。
 それまでは、子どもは体のどこの部分が痛いのか分からないのです。お腹が痛いという場合でも体全体が痛く感じるそうです。4歳ぐらいまでは、大人がどこが具合が悪いのか見極めてあげることが大切です。

運動感覚は、5,6歳ごろ成熟します。
 この頃、体の動きをコントロールできるようになります。5歳ごろになるまでは、走り出したら止まらないということがよくあります。まだ自分の動きをコントロールできないということを分かってあげる必要があります。

平衡感覚は、7歳ごろ成熟します。
 子どもが補助なし自転車に乗れるようになるとバランス感覚が統合されたといわれます。まだ準備ができていないのに、早くから様々な運動をさせるようなことは避けるようにしなければなりません。

 味覚は、 9歳ごろ成熟します。
 9歳ごろまでは好きな味が狭く、9歳を過ぎると楽しめる味覚が広がります。小さい子どもがあまり食べないと心配する必要はありません。無理に「食べなさい」と押し付けないで、まだ発達している時期だからと思って下さいとのことでした。

 嗅覚は、 8歳ごろ成熟します。
 悪い匂い、いい匂いを正確に感じるようになります。8歳以前は、まだその匂いがどんな匂いなのか見分けることができません。8歳ぐらいまでは、できるだけ自然な匂いを嗅げるように、あまり刺激の強い人工的な香りを嗅がないように気をつけます。

 味覚は、 9歳ごろに成熟します。
 9歳までは大人が必要な食べ物を与える必要があります。

 視覚は、 12歳ごろ成熟します。
 視覚の発達に一番悪いのはテレビです。眼科手術の後、眼球を動かさないようにするには、眼帯をするよりもテレビを見ることの方が効果があるといわれているそうです。まだ、視覚の発達の途中にある子どもにテレビを見せることは、眼球を動かさないようにしていることなのですと。

 熱感覚は、 14歳ごろ成熟します。
 それまでは自分にどれだけの暖かさが必要なのか分からないそうです。今では早い時期から何を着るのか子どもが決めています。4,5歳ぐらいまでは大人が気をつけてあげないと熱感覚を発達させることが難しくなるそうです。
 私が保育園に勤めている頃、子どもに薄着をさせることで丈夫な子どもに育つといわれていました。冬でも半袖、裸足という子どもが元気の印と薄着を奨励していました。また、寒くなったら自分で着ることを覚えなければと子どもに任せていたこともあります。リサさんは、子どもが薄着でも平気なのは熱感覚で感じているのではなく生命感覚で感じているからだといわれます。寒くないというのは慣れているからで、自分が馴染んでいることに心地よく感じているのだそうです。大人になって女性が生殖器の病気になるのは冷えが原因でなることが多いとのことです。特に冬の服装に関しては大人が気をつけてあげなければいけません。

聴覚は、16歳ごろ成熟します。
 16歳ごろになると、自分の好みの音楽にこだわり始めます。10歳ごろに特定の音楽にこだわるのは、自分の個性からではなく皆に人気があるからという理由が多いとのことです。

言語感覚、思考感覚、自我感覚は、16歳以降発達します。
 とても複雑なことが理解できるようになり、論理的になります。16歳以前は、知的な概念で物事を説明しても、自分の中に取り入れることはできません。青年期になって事実に基づいた真実を教えるべきです。それまでは世界は美しいところということを知らせることが大切だといわれます。

 上位感覚を発達させなければ中位感覚を使うようになるそうです。上位感覚は他者を知る感覚です。「あの人は見るだけでいやだ。」とか「あの人が横にいるだけで寒気がする。」など感情的に他者を見るようになります。思考を使う代わりに感情によって他者を判断するようになるのです。

 最後にリサさんは、この12感覚すべてが「私は私である。」ということを知らせてくれる感覚なのだといいます。成長するにしたがって、私たちは感覚を通して自我を獲得していくのですと。


12感覚を学んで
 文明社会に生活していること、そのものが健全な感覚の成長を妨げていることを痛感しました。だからといって、もう私たちは昔の生活に戻ることはできません。この社会の中で生活しながらどのようにすれば子どもの感覚を助けることができるか考える必要があります。今の子どもたちには感覚を育てる手助けが必要です。感覚に害を及ぼすものを出来るだけ遠ざけるような環境を作ること、感覚を育てるような取り組みを意識して行うことが求められます。

 特に、0歳~7歳で成熟される下位感覚の成長はとても大切です。このことをしっかり自覚して子どもたちに働きかける必要があります。
また、それぞれの感覚には成熟される時期があること、一つ一つの感覚が成熟されるまで大人が手助けしなければならないことを忘れてはなりません。

 感覚が偏ってしまったり、未発達になってしまった場合でも「もうだめだ。」というのではなく、気づいた時点から感覚のバランスを取り戻すような働きかけが出来ることも教わりました。この講座で、家庭や保育の場、学校などで出来る様々な取り組みを学ぶことができました。
また、感覚に働きかける外的な手当も少し学ぶことができました。この方法はまた次の機会に伝えることが出来ればと思っています。なぜなら、この12感覚だけではなく、その子のもつ体質や気質も理解し全体から働きかける必要があるからです。これらのことは、わずかな学びでは到底理解できません。今後の課題としたいと思います。
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by higuchi1108 | 2006-11-04 12:55 | 12感覚