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幼児教育の課題

                ひびきの村 サマープログラム
                    幼児教育レポート

 8月1日~8月5日まで幼児教育についての講座がありました。講師の先生は、シュタイナー教育を取り入れている嶺町幼稚園園長手塚映子氏です。手塚先生はソフトな声、優しいまなざし、しなやかな身のこなし、どれをとっても体全体から幼児教育者としての気品が感じられるすばらしい先生でした。
私は、6月から1ヶ月間、東京のシュタイナー幼稚園で実習させていただきました。そのときの様子も交えながら講座の内容をお伝えしたいと思います。

幼児期の課題とは何?
1,しなやかな身体を形成する。
2、感覚を大切にする。
3、意志を育てる。
 シュタイナーは,0歳~7歳までの子どもには、この3つが大切なことだと述べています。

1、しなやかな身体を形成するとは?
  医療と教育を結ぶ「シュタイナー教育」(ミヒャエラ・グレックラ-著)の本によると、生まれたばかりの赤ちゃんは、体重がおよそ3kg、身長50cmほどです。7歳までに体重が20kg増加し、身長は50cmから78㎝伸びます。この増加を最大の増加100%とすると7歳~14歳までが50%、14歳~21歳は3分の1になるそうです。このことからも0歳~7歳の間の成長力がもっとも活発な時期であることが分かります。グレックラー氏は、身長・体重だけではなく、どの感覚器官もよりよく形成されるように促されるのは最初の7年間だけだと述べています。この成長力を担っているのがエーテル体(生命体)といわれるものですが、幼児期に知的な早期教育を行うとこの生命力が記憶する方に使われてしまい身体を形成する力が弱まるのだそうです。
すこやかな体を作ることはのちのち豊かな感情や自我が形成されるための土台となるものです。

 では、しなやかな身体を形成するためにはどのような働きかけが必要なのでしょう。体を作るためには、何か体操やスポーツをやらせるといいのではと思ってしまいますが、そうではなくリズムのある生活がしなやかな身体を形成するのにとても大切なのだそうです。
 
(リズムのある生活)
 リズムのある生活といっても、メトロノームのように規則的なものではなく、もっとゆったりとした有機的なリズムのことをいいます。一日の生活の流れがいつも大体同じような時間で流れることです。こんな当たり前のことが最近では出来なくなってきているのが現状です。

 たとえば、お父さんが夜遅く帰ってきました。夜寝るのが遅くなってしまいました。次の日は、正午まで寝てしまいました。するとまた夜は遅くまで起きてしまいます。こんな日もたまにならいいけれど、寝る時間と起きる時間がその日によっていつも違っていたらどうでしょう。大人でもこんな生活が続いたら体調を崩してしまいます。嶺町幼稚園でも私が実習させていただいた園でも生活のリズムはとても大切にされています。毎日毎日同じ時間に同じことが繰り返されます。一週間の流れ、一年の流れも毎週、毎年同じことが繰り返されます。この繰り返しが子どもの心に安心を生み健やかな身体の形成を促すのです。手塚先生は、生活の流れも呼吸のように、吸う(収縮)、吐く(拡散)がリズミカルに交互に行われることが大切だといわれます。ずっーと外遊びばかり、あるいはずっーと部屋でのあそびばかりだと子どもは疲れてしまいます。

幼稚園での一日の生活はどのように行われているのでしょう。

9時~9時15分   登園 室内での自由遊び・・・・・・・拡散(吐く)

10時20分     片付け
10時40分     朝のサークル、ライゲン・・・・・・・吸う(収縮)         
11時        外遊び・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)

12時        素話、人形劇・・・・・・・・・・・・吸う(収縮)

12時20分     お弁当・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)
            お絵かき、粘土、あやとりなど
13時        帰りのサークル・・・・・・・・・・・吸う(収縮)

13時30分     降園・・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)

 
一週間の流れ
 月曜日  水彩画(ぬらし絵)
 火曜日  パン作り
 水曜日  オイリュトミー
 木曜日  おやつ作り
 金曜日  掃除
 
 曜日によっても取り組みが決められています。曜日によってすることが決まっていると、指示をしなくても次に何をするのかが分かり主体的に動くことが出来ます。シュタイナー幼稚園の先生は指示や命令が本当に少ないです。次に違う行動に移るときには指示や命令の代わりに歌をうたいます。食事をするとき、お片づけのとき、手をつなぐときなどいつも同じ歌です。私が保育者をしていたときは、いつも「次はこうして、あーして、こうするのよ。」とたえず言っていたように思います。常に何か新しい体験を子どもにさせることがよいと思っていたので、私も子どもたちも本当に落ち着きませんでした。子どもにとっては毎日同じことをしていても新しい発見があり、決して昨日と今日とでは同じではないのです。

 一年の行事も毎年決められています。
世界中の国々で、宇宙のリズム、主に太陽と月のリズムがお祭りとして祝われてきました。夏至や冬至、春分や秋分などです。嶺町幼稚園では日本のお祭りを大切にしているのだそうです。部屋には季節のテーブルが飾られ、季節を子どもたちが感じられるようにしています。

4月 
4月は入園式があります。テーブルには花やちょうを飾ります。おやつによもぎクッキーを  作ります。
5月 
テーブルには若葉、小鳥、ショウブを飾ります。おやつに柏餅を作ります。
6月 
テーブルにはアジサイ、カタツムリを飾ります。年長児は木で船を作ります。おやつに梅    ジュースを作ります。
7月 
テーブルには貝や魚を飾ります。行事では、夕涼み会をします。おやつにトウモロコシを    焼いて食べます。
9月 
テーブルには虫やすずきをかざります。おやつにみたらし団子を食べます。
10月 
テーブルには収穫を祝う果物や野菜をかざります。遠足になし狩りや芋ほりに行きま      す。おやつに焼き芋をします。
11月 
テーブルには落ち葉や冬眠する動物たちを飾ります。取り組みとしてローソク作りをしま     す。
12月 
テーブルには星やもみの木を飾ります。クリスマスのお祝いをします。
1月 
テーブルには松や雪を飾ります。行事としてお餅つきをします。
2月 
テーブルにはひいらぎを飾り節分の豆を食べます。
3月 
テーブルには小さな花や木の芽を飾ります。桃の節句にはあられを食べます。行事は卒    園式があります。

 シュタイナー幼稚園では、発表会や運動会という行事がありません。親に何かをして見せるために練習するというのは幼児期の子どもにとって、ふさわしくないと考えられているからです。今、多くの幼稚園や保育園では親に見せる行事のために生活のリズムをどんなに犠牲にしていることか。それらの行事のために、子どもたちも保育者もたくさんのストレスをためている現実をなんとか改善したいものです。そのためには、保護者の方の理解が何より必要です。

2幼児の感覚を大切にするとは?
 感覚は私たちに世界を知ること、自分を知ること、他者を知ることを教えてくれる大切なものです。
 しかし治癒教育家のバーバラ・ボールドウィン氏は、現代人はすべての人が感覚の退化に苦しんでいるといいます。近代的な生活のありようが感覚の退化を引き起こしているというのです。現代では、感覚を意識して育てようとしないと育たないといわれるのです。
また、バーバラ氏は感覚を癒すことも大切なことだといいます。今は本当に刺激が強すぎす。町に出れば派手な宣伝の看板や騒音に出会います。刺激の強い匂いや食べ物もあふれています。乳幼児の子どもたちの感覚は本来全開しています。周りにあるものはすべて良いものとして受け入れます。けれどもあまりにも刺激的なものに囲まれていると感覚の扉を閉じてしまうのだそうです。大人でも大きな音や刺激のきつい匂いなどが押し寄せてくると思わず鼻をつまんだり耳を覆いたくなります。
 

 特に0歳~7歳までは触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚が育つ時期です。これらの4つの感覚は、自分を知る感覚や他者を理解する感覚の土台になるものです。私は今まで保育者として感覚を育てるという意識がほとんどありませんでした。今、人との関係がうまくいかなくて苦しんでいる人たちが大勢いることを見ても、基本となる4つの感覚を育てることの重要性を痛感しています。

 では、感覚を育てるためにはどのような配慮が必要なのでしょう。感覚を育てるのだといって早くから絵を習わしたり、ピアノを習わすような情緒教育、あるいは早期教育がいいのでしょうか?そうではなく、シュタイナーは子どもを取り巻く環境に配慮することだと述べています。

(環境への配慮)
 環境への配慮として、現在では刺激の強いものから守ってあげることが何よりも求められます。
静けさ、やわらかさ、暖かさがあるともっと聞きたい、もっと触りたい、もっと食べたいと主体的な感覚が育ちます。手塚先生は、能動的な感覚を育てると社会の中で主体的に生きることにつながります。積極的な感覚は感情の豊かさにもつながりますといわれます。
小さな声で話をすると、「えっ」と耳をそばたてます。シュタイナー幼稚園の先生の声はとても小さな声です。高いすんだ声で歌います。そんな時、子どもたちの中に静けさが広がります。手塚先生は、目にするもの、口にするものも静けさが必要だといいます。

 シュタイナー幼稚園の環境への配慮は本当にすばらしいものがありました。建物は立派でも豪華でもないのです。むしろ古い民家を改築して使っているところがほとんどです。
そんなに広くない庭は、様々な木や草や花が植えられています。部屋に入ると、窓辺には薄いピンクのカーテンがかかっています。季節のテーブルには必ず季節の草花が飾ってありました。机や棚、いすなどの家具はすべて木製です。

シュタイナー幼稚園の庭や部屋の様子
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おもちゃはほとんど手作りで自然のものを使っています。プラスチックのものは全くありません。ほっとするもの、やわらかく、すべすべするものなど、シンプルで本物の質感のあるおもちゃを使っています。自然の木の実や貝殻などもおもちゃとして使われています。それらのおもちゃが籐の籠にきれいに入れられて棚に並べられています。部屋での自由遊びの時には、それらのおもちゃが部屋中で遊びの道具になります。
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お片づけになるとちらばっていたおもちゃが元の通りにきれいに片付きます。毎日同じように同じ場所に片付けるので、どこに何をどのように片付けるのか子どもたちはよく知っています。きれいに片付けることも遊びの一つとして喜びをもってしていました。見事に秩序のある整理整頓の力が身についていて感心してしまいました。
お片づけで悩みのないお母さんは少ないのではないでしょうか。私もその一人でした。「片付けなさい」といつも声を張り上げていたことを思い出します。子どもが片付けないのは片付け方に原因があったのですね。大きなおもちゃ箱に全部放り込むような片付け方では、秩序のある整理整頓は出来ません。おもちゃを片付けるには棚が必要です。その棚へいつも同じところに同じものを片付けるのです。子どもたちは以外に細かいものを分類するのが好きです。
けれども、何よりも大人が楽しそうに片付ける姿を見せること。これが一番喜んで片付ける秘訣だと思います。私は、「自分で使ったのだから、自分で片付けなさい。」とガミガミ言っているだけだったことをいまさら反省します。

楽器も配慮されています。大きな音の出る楽器はありません。ピアノもありません。とても小さなきれいな音の出る、鉄琴やキンダーハープ、鈴などが使われています。それらの音が響くと部屋中が静けさに包まれます。

昼食やおやつも配慮がなされています。週に2日給食がありました。メニューは玄米ご飯と野菜いっぱいの味噌汁、手作りパンとスープです。材料は出来るだけ有機野菜を使いパンも天然酵母で作ります。子どもたちが部屋であそんでいる傍らで助手の先生が作ります。数人の子どもは、野菜を切ったり、パンをこねたりして手伝います。中でもパン作りはとても人気です。いろんな形のパンを作り焼いてもらいます。メニューはずっと同じです。シンプルで素朴な給食ですが、子どもたちはおかわりをしてたくさん食べていました。私は豪華に見えないけれどむしろとても贅沢な食事に思えました。

先生の着る服も配慮がされています。派手な柄の服は着ません。たいてい無地でやわらかい色の服を着ておられました。子どもたちのかばんやお箸セットなど持ちものもアニメーションのついたものは避けてもらうようにしているようでした。照明も蛍光灯ではなく電球をつかい、和紙で覆いがしてありました。ですから、部屋の中全体が落ち着いた雰囲気に包まれていました。

 子どもたちが遊んでいる部屋で給食やおやつを作るのでとてもいい匂いが部屋中に漂ってきます。お祈りの前には子どもたちはいい匂いのするオイルを手につけてもらいます。これも楽しみの一つになっています。

見るもの、触るもの、聞こえるもの、味わうもの、匂うものすべてに最善の配慮がなされていました。

 3、意志を育てるとは?
 意志とはどういうものなのでしょう。
辞書でしらべてみると、理性による思慮・選択を決心して実行する能力とあります。
シュタイナー教育講座「教育の基礎としての一般人間学」という本の中に意志とはどういうものなのかが書かれてありました。

 はじめに、「本能」が意志として存在しているというのです。エーテル体(生命体)がこの本能を支配すると意志が「衝動」になります。感覚体が衝動に影響を及ぼすと「欲望」になるのだそうです。この 本能→衝動→欲望 までは動物の場合にも現れます。

「本能」「衝動」「欲望」が自我と結びつくと「動機」となります。動物は欲望を持つことがあっても「動機」を持つことはありません。動物には自我がないのですから。シュタイナーは人間においてこそ、欲望が本来の「意志の動機」になると述べています。私たちが動機を持ったときその意志の中に低く響いてくるもの「願望」が現れます。こうなりたいと望み行った行為がうまくできなかった場合には、「次の時にはこういうふうにしよう。」という目的、「意図」が生まれます。そして「やるんだ」という「決断」にいたります。
 意志というのは、本能→衝動→欲望→動機→願望→意図→決断 と変容していくのです。

 意志を育てるということは、本能を克服し自分の人生に目的を持って行動できる人間を育てることにつながるのですね。

 また、意志というのは共感に基づいているというのです。共感が強くなるとその共感から想像力=ファンタジーが生まれます。この想像力をもっと強く働かせると形象作用(形として表に表れる)が生じます。この形象作用によってビジョンを得るのだそうです。

 意志→共感→想像力→形象作用→ビジョン

 意志は想像力を生み、私たちの人生の未来像、展望を指し示してくれる能力に変容するのですね。これは未来へ歩んでいく力です。

 感情の中には反感もあります。反感が強まると記憶が生じます。シュタイナーは記憶というのは反感の所産以外のものではないといいます。確かに私たちは大きな共感の中にいるときにはそれが記憶に残ることは少ないですが、何かいやなことがあったり、いやなことを言われたりするとはっきりと記憶に残ります。記憶の像が固定すると概念が生じるのだそうです。

 認識→反感→記憶→概念

 この過程は過去へつながるものだといわれます。ですから、幼児期に知識を詰め込むようなことをすると未来へ向けた意志が育たず、過去のものへと子どもを結びつけることになるのですね。

 では意志を育てるのはどのようにすればいいのでしょう?

 (遊びと生活)
 意志は子どもの遊びや生活の中で育くまれます。
その場合、「共感」がキーポイントです。意志は共感の中から生まれるのです。子どもたちの遊びや生活が共感の中にあることが大切です。共感の中にいると子どもはそれらのすべてを遊びの中で模倣します。お父さんが喜んでお料理をしているとそれを見て「僕もやりたいなー」と思い真似をします。ところが、お父さんがいやいや料理をさせられていた場合、楽しそうでないお父さんの姿は真似しようとはしません。お父さんの姿は共感できないからです。
子どもは遊びの中で生活を通して共感した様々な出来事を鏡のように写しだします。それがあそびとなるのです。もし、生活の中で共感できるようなことがないとしたら遊べない子どもになります。

 子どもの遊びが発展していく様子を見てみますと意志が本能から決断に変容していく様子が手に取るように分かります。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、「本能」のまま、ただ手足をばたばた動かしているだけです。
いつの日か視線がある物をとらえます。「あ、触ってみたいなあー」という「衝動」が生まれます。触りたいという意志が寝返りを促し、はいはいを促していきます。
自由に触りたい物が触れるようになると、次から次へといろんな物を触りまくります。触りたいものは次から次へと現れて「欲望」となります。もう部屋中をちらかして、お母さんの大変な時期が始まります。

 2、3歳ごろになると自我が芽生え「動機」が生まれます。物を何かに見立てて遊ぶようになるのです。木切れを見て携帯電話に見立てたり、木の実をごばんに見立てたりして遊びます。物が動機(きっかけ)となって、遊びがより発展していきます。
 5歳ぐらいになると遊びのイメージが出来てきて「お店屋さんごっこしよう」と、自分がイメージした遊びをしたいと「願望」するようになります。
お店屋さんごっこをするためにはお店で売る物がいるし、売るものを並べる棚もいるというふうに、お店やさんごっこに必要なものを探します。こういうお店を作ろうという目的「意図」が生まれます。
必要な物も整った。お店屋さんのイメージも出来た。友だちを呼んできて「さーお店やさんごっこをしよう。」という「決断」を生むのです。

 このようなあそびの積み重ねが意志を育てていくのです。今はあそびですが、この意志は将来自分自身の人生のビジョンを見出しそれに向かって歩んでいく土台となるのです。子どもの遊びは意志を育てるためにとても大切なものなのですね。

 では、子どもの遊びを豊かにするにはどのような配慮が必要なのでしょう?

 シュタイナーは、真似をしたいと思う大人が必要だといいます。高橋弘子氏(みふじ幼稚園元園長)は現代において人が育たないのはまず、模倣すべき大人が身近にいないからだと述べておられます。子どもにとって理想的な環境はできるだけ家庭に近い状態に身をおくこと。その中で先生は子どもが遊んでいるかたわらで仕事をします。部屋では様々な手仕事や料理など、外遊びのときは庭の手入れなどをします。子どもたちは先生の仕事を見て刺激をうけそれが遊びへと発展していくのです。

 シュタイナー幼稚園の先生は子どもと一緒に遊びません。というより子どもの遊びを邪魔しません。想像力を高めるような自然素材の素朴なおもちゃがありその中で模倣したくなるお手本を示してくれる大人がいること。この二つが子どもたちの遊びを豊かに育んでいくのです。

 私は今まで大人から「あーしなさい。こうするのよ。」と言われて行動できる子どもではなく、 自分から行動できる主体的な子どもに育って欲しいと願って保育をしてきました。しかし、想像力を育てるおもちゃもお手本もなく「勝手に好きに遊びなさい。」と言っていただけでした。それはまさに放任でしかなかったのだと改めて思います。


 幼児期の課題とは、第一には、しなやかな身体を形成すること。それにはリズムのある生活と繰り返しが大切であること。
 第二には、感覚を大事にすること。それには環境に配慮することです。特に刺激の強いものから守ってあげることが必要です。
 第三に、意志を育てること。これは想像力を育むような素朴な自然素材のおもちゃと大人の良いお手本が必要であることを学びました。

 よくよく考えてみるとこれらのことは一昔前には当たり前に日常にあったものばかりです。私たちは便利な生活を手に入れた代わりにこれらの大切なものを失ってしまったのですね。子どもの成長は一足飛びにはいかないのです。昔から人間が営んできたことを丁寧に繰り返すことによって子どもは育っていくのだと思います。

 シュタイナーは子どもの年齢に即した、その年齢にふさわしい教育の仕方を指し示してくれました。
 シュタイナー幼稚園ではシュタイナーが示してくれた教育の実践が行われています。私は東京で実習させていただいてとても質の高い保育だと思いました。しかし、質の高い保育を実践しようと努力されているにもかかわらず運営的にはとても大変な様子も伺えました。シュタイナー幼稚園を始めようとすると無認可になり国からの助成金が無いのです。運営費を得るための努力が大変です。そこで働く教師の報酬も本当に少ないのです。そんな中でも使命感を持って働いておられる先生方に頭が下がります。私もひびきの村で学んだことを活かせるような保育の場を作りたいと思っているのですが、大きな課題を乗り切っていく覚悟が必要だと改めて思いました。


 手塚先生は最後に「子育てを通して大人も成長していくのです。」と述べておられました。「0歳~7歳の子どもの子育てでは、大人の意志の力も引き出してくれます。7歳~14歳までの子どもの子育てでは感情の力、14歳~21歳までの子育てでは思考の力を引き出してくれるのです。子育てが終わったときには子どもと共にダブルで大人も成長できるのですよ。」とおっしゃっていました。
 この言葉は、様々な子どもと出会い対応に悩んでいる保育者や、我が子の子育てで悩んでいるお母さんにとって本当に勇気付けられる言葉でした。子どもと共に生活しているから自分も成長できるのです。ありがたいことですね。
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by higuchi1108 | 2007-08-31 20:59 | 幼児教育講座