タインチェリー氏による幼児教育講座

               タインチェリー氏の幼児教育講座
 タイン氏による幼児教育の講座がありました。今回はシュタイナー幼稚園での具体的な取り組みの内容を教えていただきました。私はこの講座の後、3週間の実習があり、その中で体験した事も交えながらお伝えしたいと思います。

まず、0歳~7歳までの子どもの課題は何かということをもう一度思い出してみたいと思います。

1、身体を育てること。
2、意志を育てること。
3、感覚を大事にすること。

この3つでした。

1、身体を育てる
 身体を育てるためには「リズムがとても大切である」ということを学びました。リズムとは繰り返しであり2極性があります。けれど決して機械的な繰り返しではありません。タインさんは、「呼吸、惑星の運行など、命はこういうものに寄りかかっています。呼吸が一つでも欠けたり、太陽が昇らない日があったら私たちは死んでしまいます。すべてはリズムであり、リズムは命であり、生命力であり、安全性でもあります。」といわれます。どの人にとってもリズムは大切ですが特に子どもはとても大切なものです。大人であれば眠れない日があっても、夕食を食べなくても次の日、補うことができます。でも子どもは出来ません。子どもには必ずリズムが必要です。子どものリズムは大人である私たちがしっかり作ってあげること、それなしには子どもの命さえも守ってあげられないのです。そして、命であるリズムが私たちの習慣を作ってくれるのです。

シュタイナー幼稚園のリズム
 リズムには、日常の決まりきったことを繰り返すという要素があります。軍隊での生活も、食事の時間、就寝の時間など厳重に決められています。朝、ベルがなったらサーと起きて整列します。少しでも遅れたら叱られます。まるで機械のようです。子どもが必要なのはこのようなリズムではなく調和があり柔軟性が必要だといわれます。行事やお祭りがあるとスケジュールを変更したり、めったに雪が降らない地域で雪が降ると、その日は室内遊びをなくして貴重な雪遊びの体験をさせてあげるなど柔軟に変えることも必要です。

 具体的に、幼稚園や保育園の一日のリズムはどのようなものなのでしょうか。

 タインさんは、対象の子どもの年齢、保育時間、その国や土地の文化、場所、気候、夏と冬、子どもの様子や保護者の求めているもの、教師が必要としているもなどによって変わるといわれます。実際に実習の体験から外遊びは午後から行っているところもありました。一般的には登園してきたら部屋遊びを先に行い次に外遊びがあります。でも、沖縄などでは午前中の涼しいときに外遊びを先にして部屋遊びを後にしていると聞きました。

 大切なのはどのようなスケジュールでも呼吸のように吸う(収縮)、吐く(拡散)のリズムがあることです。

(実習先での一日の流れ)
9:00  登園
       部屋での自由遊び            吐く
10:30  おもちゃの片付け
10:45  おやつ 
       モーニングサークル(ライゲン)か   吸う
       オイリュトミー           
11:00  外遊び                    吐く
12:30  後片付け
12:45  お話か人形劇               吸う
13:00  昼食                     吐く
13:30  降園

タ インさんは降園後の家でのスケジュールも「吸う」、「吐く」のリズムのある生活が出来るよう保護者と話し合い、リズムを整えることを手助けすることも大切だといわれていました。

 リズムのある生活は疲れません。心臓や呼吸のリズムは正しく行われているときは決して疲れません。私たちが生まれてから死ぬまで休むことなく働き続けてくれます。なぜ疲れないのでしょう。それは吸うから吐くに変わる、吐くから吸うに変わるときにほんの少しの休みがあるからです。

 この休みに当たるところ、今の活動から違う活動に移るときのつなぎ目がとても難しいのです。このつなぎ目がうまくいけばすべての活動がスムーズに流れます。
家庭でも寝る時間なのにいつまでも遊んでいる子どもに悩まされていませんか。私も保育現場にいた時、外での遊びを終えて部屋での遊びに切り替えるとき、なかなか部屋に入ってこようとしない子。お片づけの時間だといっても知らん顔で遊び続ける子が必ずいました。結局、叱って強引に従わせるということになっていました。

シュタイナー幼稚園では、このつなぎ目にいつも決まった儀式を行います。

儀式―敬う気持ちを育てる。
 例えば、お片づけの時間になると先生は鈴をならしお片づけのうたを歌います。モーニングサークルを始める前には決まった手遊びをし、輪になるための歌をうたいます。子どもたちは「次はこうするのよ。」といわなくても、歌を聞いただけで手をつなぎ輪になります。お話や人形劇が始まるときにはキンダーハーブを弾き、ろうそくに火をつけます。
タインさんは、このような儀式がないと子どもは騒ぎまわるといいます。
いつも同じ歌、同じ方法で行うこと。これが儀式です。

 このつなぎ目の活動をどうして儀式というのでしょう。タインさんは、キンダーハーブを弾くときの行為も、ハーブをとても大切に扱い、敬う気持ちをこめて弾くことが大切だといいます。タインさんから人形劇の始まる前の儀式を教えていただきました。キンダーハーブを弾き、ローソクに火をつけます。そして静かに歌いながら舞台の上の布をとります。まるで茶の湯の作法である御手前のように合理的で無駄のない美しい動きでした。人形劇が終わった後も同じように行います。ローソクを消すときも息で「ふー」と吹き消したりしませんよ。枝のついたローソク消しで静かに消します。シュタイナーは「人形劇は神聖な芸術なのだ。」と述べています。子どもたちをメルヘンの世界へ導くための大切な儀式です。

 子どもたちは、このような先生の行為を見ることによって敬う気持ちや畏敬の念を養うことができるのです。先生が行為することに自信を持ち喜びをもって行うこと。静かなジェスチャーではっきりとわかる態度で行うこと。それが儀式なのだと。大人がするジェスチャーに敬う気持ちがこめられていることが、子どもの心に尊敬や畏敬の念を育むことができるのです。

 つなぎ目に儀式を用いることによって、子どもの心に敬う気持ちを育むことを目指すということ。私には本当に驚きでした。叱って強引に従わせるというのとではなんという違いでしょう。
今、子育て中のお母さん、お父さん。子どもが寝る前には「早く寝なさい。」と大声で叱るのではなく、ローソクに火をともして絵本を読んであげたり、短いお話を語ってあげたりしてみてはどうでしょうか。早く寝かせなければという大人のストレスも和らぎ平和に一日を終えることができると思います。


2、意志を育てる
 タインさんは「幼い子どもは意志そのものです。」といわれます。何かをするときには必ず意志が働いています。健康な子どもはいつも動き回っています。これが子どもたちの本質です。意志というのはどの子どもたちにも元々備わっているものなのです。ですからわざわざ育てる必要はないのです。

 では意志を育てるとはどういうことなのでしょう。
意志を育てるという場合、「どのような意志を育てるのか。」ということが大切です。

 強い意志があれば何かを成し遂げることが出来ます。その「何を成し遂げるか」が問題なのです。例えば「この町に爆弾を落とそう」と意志します。ち密な計画を練り実行します。強い意志があればこんな事でも出来るのです。意志は使い方を間違えると否定的になります。

 タインさんは、幼い子どもたちは「私」が確立していないため、激しい手に負えない意志、しつけられていない意志、教育されていない意志、こういう意志が備わっているといいます。意志は間違った方向に行きやすいのも事実です。教育によって意志を正しく方向づけてあげることが必要なのです。

 教育とは正しい意志の教育ともいえます。

 では、コントロールのきかない意志をどうやって教育すればいいのでしょうか。
シュタイナーは「もっとも重要な道具は模倣だ。」といいました。

 模倣するのは意志の表現でもあり子どもの本性である。

 模倣は生まれ持って備わっているものです。けれども子どもの模倣はただコピーのように真似るのではありません。オウムが「おはよう」と真似るのとも違います。大人になって上手な人の絵を真似て描いてみるというのとも違います。大人のように決断や判断がないのです。
子どもの模倣はこれがいいからやってみようというのではなく、ただ無意識に何回もまねをします。良いとか悪いとか関係なく模倣します。ですから模倣のモデルとしての大人のあり方がとても重要なのです。

 もし、身近に歩く人や話しをする人がいなかったら子どもは歩くことも話をすることもできません。模倣することから、コップの使い方、お箸の持ち方、歯ブラシの使い方、手を洗うことなど日常の様々なことを学びます。模倣は学習であり自分自身のことを自分で出来るようになる手段でもあります。

話すとき
 子どもが話すことを学ぶためには、はっきりとした話し方、リズムに乗って想像力にとんだ話し方が必要です。タインさんはよい模倣の対象者になるために保育者はトレーニングする必要があるといいます。シュタイナーの芸術には言語造形という分野があります。また、子どもの前では「ちょうですか。(そうですか)」というような幼児語を使わないほうがいいとも言われています。

子どもは、大人の感情や考えなども模倣します。
 大人たちが他の人に対して親切そうに話していると子どもも同じように模倣します。逆に怒ったように対応していると子どもも同じようになります。大人が前向きなのか、いい表情をしているのかも模倣します。子どもは大人が表現している外的なものだけではなく内的なものをも模倣するのです。その人のモラル、精神的なもの、その人そのものを模倣します。
また、タインさんは、計画を立てるときでも、あやふやな計画を立て途中で変更するようなことをすれば子どもは混乱しますといわれます。

しつけるということ
 意志の教育はしつけるという意味もあります。タインさんは、しつけるとは大人が子どもにこうあって欲しいと思う大人になることだといいます。子どもにこうしなさい、ああしなさいということがしつけることではありません。
たとえば、部屋が散らかっているので片付けてもらいたい場合、「片付けなさい。」としかって無理やりさせるのではなく、まず大人が楽しそうに片付けている姿を見せることが大切です。すると子どもに楽しさが伝わり喜んで片付けるようになるといいます。

リズムがそこに加われば習慣となります。
 時間がきたらこれをする。あれをする。そのことを何回も繰り返すことによってからだの一部になっていきます。繰り返すことによって意志を強め、意志をしつけていくのです。

意志を育てるということは、破壊的ではなく建設的な意志が使えるということなのですね。

 それには大人の良いモデルが必要です。でもそんなこといわれても困ってしまいます。完璧な大人なんていないのですから。
でもよいモデルになれるように努力することはできると思います。そうする事によって私たち自身も成長していけるのです。子育てとは、大人も子どもと共に成長できるものなのですね。

また、建設的な意志を育てるためには「あそび」も欠かすことができません。

あそびについて
・遊びの要素は、ファンタジーと想像力と模倣と物(おもちゃ)です。
 あそびは、ファンタジーや想像力で浮かんだこと、日常生活の体験を模倣すること、それに物(おもちゃ)が加わってあそびになります。

(ファンタジーと想像力)
  たいていの知識はコンピューターや本から得られますが、知識を生み出すことはできません。想像力のない知識は何も生み出しません。また、想像力がないと他の人のことも理解できません。想像力は私たちが生きるうえでなくてはならない大切な能力です。
 幼い子どもの想像力はあそびに深く関わっています。子どもの年齢が低いときにはファンタジーを使っています。ファンタジーは無から物を作り出すことができます。想像力は年齢の高い子どもに生まれます。現実性があり思考の部分が多く含まれます。

ファンタジーの特徴
・3歳から4歳ぐらいまではファンタジーに富んでいる時期です。
・完全に自由です。
 そのことが好きでしています。
・自信があります。
 家だと見えなくても家なのだと自信を持っています。
・リズムがあります。
 何かを作って、また壊して、また作って壊してというリズムがあります。
・たえず変化しています。
 流れています。動いています。定まっていません。遊びが次々に変わります

想像力の特徴
・5歳から7歳の子どもにやってきます。
・思考が少しずつ介入してくるので計画性が出てきます。
 作りたいものがありそれに必要な材料をそろえ、時間をかけて完成させることができます。
・現実的なもの、思考にそったものになります。
 壁のない家は家らしくないので、もっと本物の家のように作ろうとします。

 私はこのファンタジーや想像力に富んだごっこあそびが今の子どもたちの中で萎えていっているように思えるのです。コンピューターゲームやテレビなどの影響もあると思います。早期教育に追われ、友だちと自由にあそぶ時間も少なくなってきていることもあると思います。こんな時代であるからこそ子育ての場である、保育所や幼稚園、家庭でファンタジーや想像力を育むことに重点が置かれた取り組みが必要です。

 どの子にも備わっているファンタジー、想像力。この力を萎えさせないためにはどうすればいいのでしょう。

 タインさんは、「子どもが遊んでいるときに大人が子どもに話しかけないこと、説明をしないことです。」といいます。そのことがファンタジーの力を取り戻すことになるのですと。シュタイナー幼稚園では自由あそびの時間は、先生は子どもと一緒に遊びません。ひたすら手仕事をします。また、テレビをできるだけ見せないこと、生活体験を豊にすること、そして、ファンタジーや想像力を育むおもちゃを用意することなどでしょうか。

(おもちゃについて)
 シュタイナー幼稚園では、自然の素材でできた素朴なおもちゃを使っています。人工的なものはほとんどありません。ほとんどが手作りです。

具体的には
 手作りの素朴な人形、人形のベッド、乳母車、毛布、色の布(コットン、絹、ガーゼ、綿)、あみぐるみの動物、フリースの羊毛、背もたれのない椅子、かご、木のスプーン、お皿、おわん、ドールハウス、四角でない色々な形の木の積み木、貝殻、木の実、種、板、紐、たくさんのパペット人形など。

 実習で体験した事ですが、この中で人気のあるおもちゃは、様々な木の実と天然素材の大小の布、紐でした。これらを使ってあそばない日は一度もありませんでした。完成された人工的なおもちゃはそのときは喜びますがすぐに飽きてしまいます。しかし、これらのおもちゃは毎日色々なものに変化し想像力を駆り立ててくれます。

あそびの本質は
楽しみであり自発的です。
 あそびと仕事はどう違うのでしょうか?仕事とは外から来たもので何かをします。それをするようにと指示がありタイムリミットがあります。あそびは責任がありません。それをしようと思わせるものは内にあります。それをするのはしたいからです。あそびは自発的です。
タインさんは、適切なあそびは内面にやりたいという気持ちを持たせることだといわれます。

そして、創造的で独創的です。
 あそびの本質は自由です。ここはキッチンのコーナーだからここで遊びなさい。今日はこれであそびなさい。すでに出来上がっているおもちゃを与えます。これでは自由に選択してあそぶことができません。すでに決められているのでこれは遊びとはいえません。ただの羊毛だと、たまねぎ、ほうれん草、にんじんと何にでも変えられます。
あそびは様々なものに変容することができる創造的で独創的なものです。

 子どもと関わる大人がこのあそびの本質を見失わないように環境を用意し見守る事ができれば、子どもたちの中に豊な想像力が育まれていくのではないでしょうか。

3、感覚を育てる。
 感覚を育てることによって、感情を豊に育て、人と人との関係を学びます。感覚を育てるためには環境に注意を払う必要があることを学びました。

外の環境
 陽気で幸せな雰囲気があること。草や木、花があること。種を植えてそれが成長していくのを見ることも大切です。砂場では水と一緒に遊びます。土、水、火(焚き火をしたり焼き芋をしたり)、空気(凧揚げや落下傘、紙飛行機あそびなど)、これらに関わるあそびをすること。動物がいることもいいです。

室内での環境
 タインさんは、一番必要なものは暖かさだといわれます。
物質的な暖かさは、冬にはストーブで部屋を暖めます。
心の温かさは、色で作ります。
あそびに使われる色は 赤、青、黄色、オレンジ、緑、紫です。
部屋のカーテンなどの色は、ピンク、薄赤紫(これは子どもの誕生の色)、水色です。
壁には子どもの絵は飾りません。できるだけ簡素な部屋に保ちます。鏡は子どもにはよくないそうです。自意識を高めるからだそうです。自然の素材でできたシンプルで未完成なおもちゃを用意します。先生の服装も暗い色ではなく無地で暖かい色の服を着ます。


シュタイナー幼稚園の構成されたあそび
 シュタイナー幼稚園では、自由あそびをとても大切にされていますが、構成されたあそびもとても重要です。

(モーニングサークル)
 サークルタイムともいい、ライゲン(輪になって踊る)をします・

モーニングサークルの目的は
1、子どもの精神が身体に宿ることを助けます。
 ライゲンの動きを通して、子どもそれぞれのどんな動きが難しいかを観察します。くるくる回るのができなかったり、スキップができなかったり、平衡感覚はどうか、先生の真似ができているか、人にぶつかってばかりいるか、転びやすいか、子供同士の関係はどうかなどを観察します。そして、観察したことに対して働きかけます。
2、触覚、運動感覚、平衡感覚の発達を助けます。
3、動きの発達をうながします。
  飛び跳ねたり、ハイハイしたり、スキップしたり、転がったりという動きを取り入れて運動の発達を助けます。
4、あそびに役立つような動き、歌を取り入れます。
5、伝統的なあそび、文化の中で忘れられるような動きやあそびを取り入れます。
6、呼吸を整えます。
  対極となるものを取り入れます。たとえば、開いて閉じる。風が吹く(動く)風がやむ(止まる)、指あそび(小さい動き)体全体を使う(大きい動き)、内と外など。
  タインさんは、対極になるものは調和を促し癒しとなります。道徳性にも結びつくといわれます。
7、繰り返しのある韻のある詩や言葉を使います。それらは意志を強めます。

モーニングサークルの内容
1、テーマが必要です。細かな内容ではなく一定のテーマがあること。
2、自然界のもの、季節が感じられるものをします。
3、詩や歌を取り入れます。
4、時間は10分~20分ぐらいです。年齢や状況によって決めます。
5、毎日同じものを繰り返します。1ヶ月は続けます。年齢が高くなると2週間くらい。
6、繰り返しの出てくるお話や詩を取り入れます。
7、ライゲンをするときはやり方を教えません。子どもが真似ることに任せます。

 ライゲンは、それぞれの先生がこれらのことを踏まえて自分で作るのだそうです。他の先生が作ったライゲンをお手本にすることはできますが、子どもたちの様子や状況に合わせてふさわしいものを工夫することが教師に求められます。

(水彩画)
 水彩画は色を楽しむものです。出来上がりや、形にとらわれません。

1、 絵の具は透明な植物でできたものを使います。色は、カーマインレッド、ウルトラマンブルー、レモンイエローの3原色です。

2、全員で机に座らせて一斉に行うのではなく4,5人で行います。描き終わったら次の子と交代します。

3、用意するもの
  色を入れるビン、筆を洗うビン(透明なビンを使うと、色が変わる様子を見ることができます)、平筆(長くないもの)、雑巾、紙(良質のもので角を丸く切ります。角があると知的なものになっていくとのことです。)、紙をつけておくトレー(15分ぐらい付けておきます。)、画板(角を丸くします。)キャビネット、エプロン。
4、筆の持ち方は先生が見本を示します。説明するのではなく子どもの手を添えて調度いい高さに持つように促します。
5、週に1度水彩画をします。水彩画は心の調和をもたらすそうです。月曜日に子どもたちはハイパーになっているので月曜日に取り組んでいるところもあるとのことです。

(クレヨンを使ったお絵かき)
 クレヨン画は成長のドキュメントです。その子の成長を見ることができます。子どもの絵をためて学年の終わりに持って帰らせます。

1、ブロッククレヨンがよく使われています。スチックのクレヨンでもいいですが太いものを使います。
2、色は虹の七色を使います。
3、紙はコピー用紙でもいいです。その場合角を取って丸くします。
4、絵を描く場合、指示を与えません。自由に描かせます。
5、描いたものに畏敬の念を持たせるため、折り曲げたり、切ったり、破いたりさせません。
6、1回に一枚だけ描かせます。何枚も描かせると、なおざりな描き方になります。


(みつろう粘土)
 みつろうは太陽の光を浴びて暖かいものなので、セラピーの要素があります。

 1、色が混ざってしまうので、一度に1色だけ使います。色が混ざって汚くなったものは処分し   ます。
 2、虹の七色を使います。
 3、何を作るか指示しません。
 4、冬は硬くなるので、手の暖かさの水をグラスに入れてみつろうを温めます。
 5、みつろうを渡すときは、とても大切なものを渡すように丁寧に扱います。
 

 その他、毎日語られるお話や人形劇、お祈り、歌や指あそび、楽器、オイリュトミー、手仕事などは次の機会にお知らせできればと思います。

シュタイナー幼稚園の理念は
1、保育施設は家庭の延長であること。
2、愛にあふれた暖かい環境を作ること。
3、先生は子もが真似をするにふさわしい見本となること。そして子どもたちの導き手であるこ   と。
4、あそびの中で子どもたちは学ぶということです。

 シュタイナー幼稚園ではこれらのことが徹底して保育現場で実践されていました。保育理念を実際の保育現場で行うための方法が明確に指し示されていることにも感心させられました。
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# by higuchi1108 | 2008-01-07 17:18 | 幼児教育講座

チューリッヒ→バーゼル→ドルナッハの旅

                     スイスの旅
              (チューリッヒ・バーゼル・ドルナッハ)
 
 9月3日~9月13日まで受講生4人で卒業旅行にスイスに行ってきました。一緒に旅行に行った受講生の一人がスイスに知人(ジョンとアン仮名)がいてそのお宅に4日も泊めてもらいました。そのお宅には3人の子どもさんがいてシュタイナー学校とシュタイナー幼稚園に通っていました。その関係で私はそのシュタイナー幼稚園に2日間実習をさせていただくことが出来とても充実した旅でした。緑いっぱいの美しいスイスの旅を皆さんと分かち合いたいと思います。

ドバイ経由でチュウリッヒへ
 千歳空港からチュウリッヒまで、まる1日を費やした飛行機の旅でした。メンバーの一人が格安チケット(往復15万円ほど)を購入してくれたのです。格安なのでドバイ経由の南周りでも仕方がないと思っていたのですが、なかなかの快適な飛行機の旅になりました。エミレーツ航空はさすがアラブのお金持ちの国の飛行機会社とあって今まで乗った飛行機の中で一番きれいで豪華でした。エコノミークラスでも一人ひとりの座席の前にビデオデッキが供えてあり好きなときに色々な映画を見ることができるのです。スチュワーデスさんの白いベールのついた帽子がとても魅力的でした。

ドバイについた時刻が朝の4時ごろだったにもかかわらず空港の中は人でいっぱいでした。とても広い空港にいろんな国の人たちがいました。ドバイからヨーロッパ、アフリカ、アジアなどあらゆる国に24時間飛行機がひっきりなしに飛んでいるのです。待ち時間に夜が明け、どんよりとした大きな太陽が昇るのがみえました。遠くに砂漠の中の近代的なビルが蜃気楼のように見えます。緑が全く無いのです。ここは砂漠なのだと改めて思いました。

チューリッヒからベッチコンへ
 チューリッヒから電車とバスを乗り継いで30分行くとアンとジョンの住むベッチコンという小さな町があります。ここはドバイと違い緑いっぱいの美しいところです。パッチワークの畑、とうもろこし畑、牛たちがのんびりと草を食べている景色は北海道と似ているのですが家のたたずまいが違うのです。スイス伝統の建築を大事に守っているのです。家の窓にはお花が咲いていて庭も美しく手入れがしてあります。小さな集落には必ず高い塔のある教会があります。
 ベッチコンの教会
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 次の日は、ジョンとアンの家から歩いて5分ほどのところにある湖に遊びに行きました。ジョンがカナダに住んでいるときに作ったというカヌーを持って。
私もカヌーに乗せてもらいました。途中運河のように幅の狭いところに来ると、両岸にはりんごやなしの木がたくさん実をつけていました。その実をカヌーの上からもぎ取ったりしてなんとも優雅な遊びの時間でした。
 ベッチコンの湖
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シュタイナー幼稚園に見学実習をさせてもらって
 アンの計らいでベッチコンのシュタイナー幼稚園に二日間実習させていただきました。スイスでは少し大きな町にはシュタイナー学校が1つはあるのだそうです。そこは学校と併設された幼稚園でシュタイナー建築の立派な建物でした。学校の教室もそうなのですが部屋が六角形に作られています。四角の角のある教室ではなく出来るだけ丸くて包まれているような空間を目指して作られているのだそうです。私が実習させていただいたクラスの先生はベテランの先生でどっしりとした頼りになるやさしい先生でした。スイスでは新学期が始まったばかりなのに、新学期とは思えないほど子どもたちはとても落ち着いていました。

(一日の流れ)
 8:00 登園
      部屋での自由遊び
 9:30 お片づけ
      朝のあいさつ
      ライゲン
10:00 おやつ
      お絵かき
10:40 外遊び
11:45 お話か人形劇
12:00 降園
 
 朝の自由あそびでは、収穫の季節だったので部屋には麦の穂が飾られていて子どもたちと一緒に麦の穂を手でもんで麦を取ってビンに入れる作業をしました。麦は子どもたちと一緒に粉にしてパンを焼いて食べるのだそうです。
 きれいに飾られた麦の穂
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 季節のテーブル
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 私は手仕事として、りんごの芯をとりなべに入れて蜂蜜と共に煮てそれを手動のミキサーにかける仕事をしました。これはおやつの時間にパンと一緒に食べます。おやつは毎日りんごのペーストとパンです。その土地で取れるものを食べるようにしているとおっしゃっていました。りんごの煮えるいい匂いが部屋中に漂っていました。先生の手仕事の机には大工道具一式、裁縫道具一式が置いてあり、その日は壊れたおもちゃをなおしておられました。

 部屋遊びが終わるとお片づけです。お片づけの様子は日本のシュタイナー幼稚園と同じでしたが布の片づけが印象に残りました。大きな布は二人で持って歌を歌いながらたたんでいきます。小さな布を持った子は先生の前に並びます。先生は足を広げて座りその中へ子どもを仰向けに寝かせます。子どもの顔から胴にかけて布をかぶせ、先生はアイロンをかけるまねをしながら布をたたんでいきます。子どもたちはくすぐったいやら気持ちいいやら、みんな笑っています。布がたたみ終わるとその子の要望にこたえて頭の上や背中、腰のところに布を置いてもらい様々な動物になって布をしまいにいきます。お片づけもこんなに楽しく工夫しておられるのだと感心しました。

 おやつの後はお絵かきがありました。このクラスではステッククレヨンを使用されていました。シュタイナー幼稚園では普通ブロッククレヨンが使われているので聞いて見ると、ブロッククレヨンでは正しい持ち方ができないので使っていないということでした。子どもたちは描き終わると先生のところへ絵を見せに行きます。先生は一人ずつひざに抱いて絵を見ながら歌を歌ってあげます。そのときの子どもたちの笑顔が印象的でした。ドイツ語なのでわかりませんが、きっと「とっても素敵な絵ね。」という歌なのでしょう。
 
 お絵描きが終わった子どもから外へ遊びに行きます。外に出てみると8年生のお兄ちゃんが授業の中で穴を掘ってポンプを取り付けて水道を作る作業をしていました。子どもたちも同じようにスコップを持ってきて穴を掘るまねをしたりして興味津々で眺めていました。二日目には水道は完成し、子どもたちの砂場に水が流れ川が出来ました。お兄ちゃんたちも子どもたちも大喜びです。学校でのこのような作業を子どもたちに見せることは最初から計画されていたそうです。学校と連携をとりながら保育をすることができるなんて本当にいいなあと思いました。

 外遊びの中でも先生はポケットからナイフを取り出し、枝を削ってなにやら作っておられました。枝で作ったお人形のようです。木の葉や花で色をつけて私にプレゼントしてくださいました。
木の枝の人形
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 降園の前に人形劇を見ました。舞台や人形など色や形が本当に芸術的です。シュタイナー幼稚園でも学校でもそうですが、子どもに見せるのだからと簡単な作りのものや漫画チックな物で代用することはありません。
日本で見たシュタイナー幼稚園の人形劇の舞台は長方形のテーブルでしたが、ここではドーナツを半分に切ったような形でした。これだと舞台は広くなるし、演じる人は一人でできるのでなかなかいいなあと思いました。

 保育の途中で歯の抜けた子どもが先生のところへ見せにきました。先生はその歯をとても大事そうに受け取りました。そして胡桃の中に羊毛を少し入れ、その中に抜けた歯を入れ、ふたをしてきれいな布でくるみ、紐をつけてペンダントのようにして子どもの首にかけてあげていました。手早くこのような行為が出来るのは歯の抜けた子がいるときのために、胡桃や布や紐をいつも用意されているのだと思いました。細かな配慮に感心しました。その子は大きくなった喜びを体中で感じているようでとてもうれしそうでした。

 ベッチコンのシュタイナー幼稚園でも、想像力を引き出すような自然で素朴なおもちゃがありその傍らで先生が手仕事をしています。子どもたちは安心して自分たちの遊びに没頭していました。部屋の中で走り回ったり、暴れる子どももいません。静けさの中で穏やかに一日が流れていました。先生が落ち着いて自信をもって子どもたちと接しておられたことも印象に残りました。環境を整えること、リズムのある生活、教師のあり方、どれも本当に勉強になりました。

ドルナッハ・ゲーテアヌム
 ドルナッハでは、ジョンがユースホステルを予約してくれました。4人部屋の2段ベッドでしたが、シュタイナー建築の清潔な宿泊所でした。一泊2500円で泊まれ、設備の整った炊事場もあり自炊も出来ます。スイスは物価が高く日本の2倍以上します。外食だとお金があっという間になくなってしまうので助かりました。

 ドルナッハはさすが人智学の本家です。シュタイナー建築の素敵な建物がたくさんありました。緑がいっぱいの小高い丘の上にゲーテアヌムがあり、その周辺に学校や幼稚園、病院、住宅、お店などが点在しています。静かでとても美しい町でした。
ゲーテアヌム
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 ドルナッハでは、ゲーテアヌム、ゾンネンフォフ治癒学校、イタベークマンクリニック(人智学医療の病院)などを見学しました。

 ゲーテアヌムは写真では見たことがあったのですが、実物を見て意外と近代的な印象を持ちました。ゲーテアヌムの劇場でオイリュトミーや劇の公演を見ることが出来たらさぞや感動するだろうなあと思いました。

 治癒学校はジョンのおばさんに案内してもらい中を見せてもらいました。おばさんは元この治癒学校の職員で今はドルナッハに住んでおられます。見学したときは放課後で誰もいなかったのですが、どの部屋もきれいに整えられていて子どもたちが楽しく過ごしている情景が目に見えるようでした。

 イタベークマンクリニックは1921年に始まったのだそうです。もう90年近い歴史がある病院です。産科で産声をあげてから老人になるまでこの病院でお世話になっている人もいるとか。

 内科、精神科、産婦人科があり医師が20人いるのだそうです。普通の病院と違うところはアントロポゾフィー(人智学)の手当をしていることです。手当ての方法として、治癒オイリュトミー、絵画、彫塑、栄養風呂、外的な湿布などがあります。入り口を入ったところに薬の処方箋をしている部屋があり、べェレダの商品がたくさん並んでいました。

 日本人の治癒オイリュトミストの方を通じて中を見せていただくことが出来ました。普通の病院のような消毒液のにおいがしないこと、廊下にかけられた絵がとてもきれいでした。分娩室や亡くなった方を安置する部屋なども見せていただきました。分娩室は家庭のような部屋の中に分娩のためのベッドとその横に生まれた赤ちゃんのためのかわいいベッドが置いてありました。亡くなった方を安置する場所は教会の中のような雰囲気でした。
ドルナッハの町の様子
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 ロープーウエーと登山電車に乗ってピラトゥス山へ
 日曜日にはジョンの家族と一緒にアルプスの山を見に行きました。バーゼルからルツェルンという町へ行き、そこからロープーウエーに乗って一気に2132メートルの山頂に着きます。雄大なアルプスの山々を眺めようと楽しみにしていたのですが、山頂はあいにく濃い霧に包まれ何にも見えませんでした。残念!

 山頂からは登山電車に乗り継ぎ、今度は一気に下山します。世界で一番急勾配のある電車とのことでした。本当に崖のような坂を電車が走るのです。電車を降りて、今度は遊覧船に乗って湖を横断しルツェルンに戻ります。船の上からは湖畔のスイスの美しい町が映画を見ているように通り過ぎて行きます。
登山電車からの眺め
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遊覧船からスイスの町を眺める
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 ルツェルンの町はスイスに来てやっと観光地らしきところに来たなあという感じでした。
ルツェルンの町
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 スイスの旅もいよいよ最終日。飛行機の乗る時間までチューリッヒの町をぶらぶら歩きました。
歴史博物館
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ペスタロッチの銅像
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 お土産に、スイスのチョコレート、チーズ、それにベェレダの商品を買って楽しいスイス旅行を終えました。
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# by higuchi1108 | 2007-09-17 20:41 | スイス旅行ゲーテアヌムを訪ねて

幼児教育の課題

                ひびきの村 サマープログラム
                    幼児教育レポート

 8月1日~8月5日まで幼児教育についての講座がありました。講師の先生は、シュタイナー教育を取り入れている嶺町幼稚園園長手塚映子氏です。手塚先生はソフトな声、優しいまなざし、しなやかな身のこなし、どれをとっても体全体から幼児教育者としての気品が感じられるすばらしい先生でした。
私は、6月から1ヶ月間、東京のシュタイナー幼稚園で実習させていただきました。そのときの様子も交えながら講座の内容をお伝えしたいと思います。

幼児期の課題とは何?
1,しなやかな身体を形成する。
2、感覚を大切にする。
3、意志を育てる。
 シュタイナーは,0歳~7歳までの子どもには、この3つが大切なことだと述べています。

1、しなやかな身体を形成するとは?
  医療と教育を結ぶ「シュタイナー教育」(ミヒャエラ・グレックラ-著)の本によると、生まれたばかりの赤ちゃんは、体重がおよそ3kg、身長50cmほどです。7歳までに体重が20kg増加し、身長は50cmから78㎝伸びます。この増加を最大の増加100%とすると7歳~14歳までが50%、14歳~21歳は3分の1になるそうです。このことからも0歳~7歳の間の成長力がもっとも活発な時期であることが分かります。グレックラー氏は、身長・体重だけではなく、どの感覚器官もよりよく形成されるように促されるのは最初の7年間だけだと述べています。この成長力を担っているのがエーテル体(生命体)といわれるものですが、幼児期に知的な早期教育を行うとこの生命力が記憶する方に使われてしまい身体を形成する力が弱まるのだそうです。
すこやかな体を作ることはのちのち豊かな感情や自我が形成されるための土台となるものです。

 では、しなやかな身体を形成するためにはどのような働きかけが必要なのでしょう。体を作るためには、何か体操やスポーツをやらせるといいのではと思ってしまいますが、そうではなくリズムのある生活がしなやかな身体を形成するのにとても大切なのだそうです。
 
(リズムのある生活)
 リズムのある生活といっても、メトロノームのように規則的なものではなく、もっとゆったりとした有機的なリズムのことをいいます。一日の生活の流れがいつも大体同じような時間で流れることです。こんな当たり前のことが最近では出来なくなってきているのが現状です。

 たとえば、お父さんが夜遅く帰ってきました。夜寝るのが遅くなってしまいました。次の日は、正午まで寝てしまいました。するとまた夜は遅くまで起きてしまいます。こんな日もたまにならいいけれど、寝る時間と起きる時間がその日によっていつも違っていたらどうでしょう。大人でもこんな生活が続いたら体調を崩してしまいます。嶺町幼稚園でも私が実習させていただいた園でも生活のリズムはとても大切にされています。毎日毎日同じ時間に同じことが繰り返されます。一週間の流れ、一年の流れも毎週、毎年同じことが繰り返されます。この繰り返しが子どもの心に安心を生み健やかな身体の形成を促すのです。手塚先生は、生活の流れも呼吸のように、吸う(収縮)、吐く(拡散)がリズミカルに交互に行われることが大切だといわれます。ずっーと外遊びばかり、あるいはずっーと部屋でのあそびばかりだと子どもは疲れてしまいます。

幼稚園での一日の生活はどのように行われているのでしょう。

9時~9時15分   登園 室内での自由遊び・・・・・・・拡散(吐く)

10時20分     片付け
10時40分     朝のサークル、ライゲン・・・・・・・吸う(収縮)         
11時        外遊び・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)

12時        素話、人形劇・・・・・・・・・・・・吸う(収縮)

12時20分     お弁当・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)
            お絵かき、粘土、あやとりなど
13時        帰りのサークル・・・・・・・・・・・吸う(収縮)

13時30分     降園・・・・・・・・・・・・・・・・拡散(吐く)

 
一週間の流れ
 月曜日  水彩画(ぬらし絵)
 火曜日  パン作り
 水曜日  オイリュトミー
 木曜日  おやつ作り
 金曜日  掃除
 
 曜日によっても取り組みが決められています。曜日によってすることが決まっていると、指示をしなくても次に何をするのかが分かり主体的に動くことが出来ます。シュタイナー幼稚園の先生は指示や命令が本当に少ないです。次に違う行動に移るときには指示や命令の代わりに歌をうたいます。食事をするとき、お片づけのとき、手をつなぐときなどいつも同じ歌です。私が保育者をしていたときは、いつも「次はこうして、あーして、こうするのよ。」とたえず言っていたように思います。常に何か新しい体験を子どもにさせることがよいと思っていたので、私も子どもたちも本当に落ち着きませんでした。子どもにとっては毎日同じことをしていても新しい発見があり、決して昨日と今日とでは同じではないのです。

 一年の行事も毎年決められています。
世界中の国々で、宇宙のリズム、主に太陽と月のリズムがお祭りとして祝われてきました。夏至や冬至、春分や秋分などです。嶺町幼稚園では日本のお祭りを大切にしているのだそうです。部屋には季節のテーブルが飾られ、季節を子どもたちが感じられるようにしています。

4月 
4月は入園式があります。テーブルには花やちょうを飾ります。おやつによもぎクッキーを  作ります。
5月 
テーブルには若葉、小鳥、ショウブを飾ります。おやつに柏餅を作ります。
6月 
テーブルにはアジサイ、カタツムリを飾ります。年長児は木で船を作ります。おやつに梅    ジュースを作ります。
7月 
テーブルには貝や魚を飾ります。行事では、夕涼み会をします。おやつにトウモロコシを    焼いて食べます。
9月 
テーブルには虫やすずきをかざります。おやつにみたらし団子を食べます。
10月 
テーブルには収穫を祝う果物や野菜をかざります。遠足になし狩りや芋ほりに行きま      す。おやつに焼き芋をします。
11月 
テーブルには落ち葉や冬眠する動物たちを飾ります。取り組みとしてローソク作りをしま     す。
12月 
テーブルには星やもみの木を飾ります。クリスマスのお祝いをします。
1月 
テーブルには松や雪を飾ります。行事としてお餅つきをします。
2月 
テーブルにはひいらぎを飾り節分の豆を食べます。
3月 
テーブルには小さな花や木の芽を飾ります。桃の節句にはあられを食べます。行事は卒    園式があります。

 シュタイナー幼稚園では、発表会や運動会という行事がありません。親に何かをして見せるために練習するというのは幼児期の子どもにとって、ふさわしくないと考えられているからです。今、多くの幼稚園や保育園では親に見せる行事のために生活のリズムをどんなに犠牲にしていることか。それらの行事のために、子どもたちも保育者もたくさんのストレスをためている現実をなんとか改善したいものです。そのためには、保護者の方の理解が何より必要です。

2幼児の感覚を大切にするとは?
 感覚は私たちに世界を知ること、自分を知ること、他者を知ることを教えてくれる大切なものです。
 しかし治癒教育家のバーバラ・ボールドウィン氏は、現代人はすべての人が感覚の退化に苦しんでいるといいます。近代的な生活のありようが感覚の退化を引き起こしているというのです。現代では、感覚を意識して育てようとしないと育たないといわれるのです。
また、バーバラ氏は感覚を癒すことも大切なことだといいます。今は本当に刺激が強すぎす。町に出れば派手な宣伝の看板や騒音に出会います。刺激の強い匂いや食べ物もあふれています。乳幼児の子どもたちの感覚は本来全開しています。周りにあるものはすべて良いものとして受け入れます。けれどもあまりにも刺激的なものに囲まれていると感覚の扉を閉じてしまうのだそうです。大人でも大きな音や刺激のきつい匂いなどが押し寄せてくると思わず鼻をつまんだり耳を覆いたくなります。
 

 特に0歳~7歳までは触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚が育つ時期です。これらの4つの感覚は、自分を知る感覚や他者を理解する感覚の土台になるものです。私は今まで保育者として感覚を育てるという意識がほとんどありませんでした。今、人との関係がうまくいかなくて苦しんでいる人たちが大勢いることを見ても、基本となる4つの感覚を育てることの重要性を痛感しています。

 では、感覚を育てるためにはどのような配慮が必要なのでしょう。感覚を育てるのだといって早くから絵を習わしたり、ピアノを習わすような情緒教育、あるいは早期教育がいいのでしょうか?そうではなく、シュタイナーは子どもを取り巻く環境に配慮することだと述べています。

(環境への配慮)
 環境への配慮として、現在では刺激の強いものから守ってあげることが何よりも求められます。
静けさ、やわらかさ、暖かさがあるともっと聞きたい、もっと触りたい、もっと食べたいと主体的な感覚が育ちます。手塚先生は、能動的な感覚を育てると社会の中で主体的に生きることにつながります。積極的な感覚は感情の豊かさにもつながりますといわれます。
小さな声で話をすると、「えっ」と耳をそばたてます。シュタイナー幼稚園の先生の声はとても小さな声です。高いすんだ声で歌います。そんな時、子どもたちの中に静けさが広がります。手塚先生は、目にするもの、口にするものも静けさが必要だといいます。

 シュタイナー幼稚園の環境への配慮は本当にすばらしいものがありました。建物は立派でも豪華でもないのです。むしろ古い民家を改築して使っているところがほとんどです。
そんなに広くない庭は、様々な木や草や花が植えられています。部屋に入ると、窓辺には薄いピンクのカーテンがかかっています。季節のテーブルには必ず季節の草花が飾ってありました。机や棚、いすなどの家具はすべて木製です。

シュタイナー幼稚園の庭や部屋の様子
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おもちゃはほとんど手作りで自然のものを使っています。プラスチックのものは全くありません。ほっとするもの、やわらかく、すべすべするものなど、シンプルで本物の質感のあるおもちゃを使っています。自然の木の実や貝殻などもおもちゃとして使われています。それらのおもちゃが籐の籠にきれいに入れられて棚に並べられています。部屋での自由遊びの時には、それらのおもちゃが部屋中で遊びの道具になります。
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お片づけになるとちらばっていたおもちゃが元の通りにきれいに片付きます。毎日同じように同じ場所に片付けるので、どこに何をどのように片付けるのか子どもたちはよく知っています。きれいに片付けることも遊びの一つとして喜びをもってしていました。見事に秩序のある整理整頓の力が身についていて感心してしまいました。
お片づけで悩みのないお母さんは少ないのではないでしょうか。私もその一人でした。「片付けなさい」といつも声を張り上げていたことを思い出します。子どもが片付けないのは片付け方に原因があったのですね。大きなおもちゃ箱に全部放り込むような片付け方では、秩序のある整理整頓は出来ません。おもちゃを片付けるには棚が必要です。その棚へいつも同じところに同じものを片付けるのです。子どもたちは以外に細かいものを分類するのが好きです。
けれども、何よりも大人が楽しそうに片付ける姿を見せること。これが一番喜んで片付ける秘訣だと思います。私は、「自分で使ったのだから、自分で片付けなさい。」とガミガミ言っているだけだったことをいまさら反省します。

楽器も配慮されています。大きな音の出る楽器はありません。ピアノもありません。とても小さなきれいな音の出る、鉄琴やキンダーハープ、鈴などが使われています。それらの音が響くと部屋中が静けさに包まれます。

昼食やおやつも配慮がなされています。週に2日給食がありました。メニューは玄米ご飯と野菜いっぱいの味噌汁、手作りパンとスープです。材料は出来るだけ有機野菜を使いパンも天然酵母で作ります。子どもたちが部屋であそんでいる傍らで助手の先生が作ります。数人の子どもは、野菜を切ったり、パンをこねたりして手伝います。中でもパン作りはとても人気です。いろんな形のパンを作り焼いてもらいます。メニューはずっと同じです。シンプルで素朴な給食ですが、子どもたちはおかわりをしてたくさん食べていました。私は豪華に見えないけれどむしろとても贅沢な食事に思えました。

先生の着る服も配慮がされています。派手な柄の服は着ません。たいてい無地でやわらかい色の服を着ておられました。子どもたちのかばんやお箸セットなど持ちものもアニメーションのついたものは避けてもらうようにしているようでした。照明も蛍光灯ではなく電球をつかい、和紙で覆いがしてありました。ですから、部屋の中全体が落ち着いた雰囲気に包まれていました。

 子どもたちが遊んでいる部屋で給食やおやつを作るのでとてもいい匂いが部屋中に漂ってきます。お祈りの前には子どもたちはいい匂いのするオイルを手につけてもらいます。これも楽しみの一つになっています。

見るもの、触るもの、聞こえるもの、味わうもの、匂うものすべてに最善の配慮がなされていました。

 3、意志を育てるとは?
 意志とはどういうものなのでしょう。
辞書でしらべてみると、理性による思慮・選択を決心して実行する能力とあります。
シュタイナー教育講座「教育の基礎としての一般人間学」という本の中に意志とはどういうものなのかが書かれてありました。

 はじめに、「本能」が意志として存在しているというのです。エーテル体(生命体)がこの本能を支配すると意志が「衝動」になります。感覚体が衝動に影響を及ぼすと「欲望」になるのだそうです。この 本能→衝動→欲望 までは動物の場合にも現れます。

「本能」「衝動」「欲望」が自我と結びつくと「動機」となります。動物は欲望を持つことがあっても「動機」を持つことはありません。動物には自我がないのですから。シュタイナーは人間においてこそ、欲望が本来の「意志の動機」になると述べています。私たちが動機を持ったときその意志の中に低く響いてくるもの「願望」が現れます。こうなりたいと望み行った行為がうまくできなかった場合には、「次の時にはこういうふうにしよう。」という目的、「意図」が生まれます。そして「やるんだ」という「決断」にいたります。
 意志というのは、本能→衝動→欲望→動機→願望→意図→決断 と変容していくのです。

 意志を育てるということは、本能を克服し自分の人生に目的を持って行動できる人間を育てることにつながるのですね。

 また、意志というのは共感に基づいているというのです。共感が強くなるとその共感から想像力=ファンタジーが生まれます。この想像力をもっと強く働かせると形象作用(形として表に表れる)が生じます。この形象作用によってビジョンを得るのだそうです。

 意志→共感→想像力→形象作用→ビジョン

 意志は想像力を生み、私たちの人生の未来像、展望を指し示してくれる能力に変容するのですね。これは未来へ歩んでいく力です。

 感情の中には反感もあります。反感が強まると記憶が生じます。シュタイナーは記憶というのは反感の所産以外のものではないといいます。確かに私たちは大きな共感の中にいるときにはそれが記憶に残ることは少ないですが、何かいやなことがあったり、いやなことを言われたりするとはっきりと記憶に残ります。記憶の像が固定すると概念が生じるのだそうです。

 認識→反感→記憶→概念

 この過程は過去へつながるものだといわれます。ですから、幼児期に知識を詰め込むようなことをすると未来へ向けた意志が育たず、過去のものへと子どもを結びつけることになるのですね。

 では意志を育てるのはどのようにすればいいのでしょう?

 (遊びと生活)
 意志は子どもの遊びや生活の中で育くまれます。
その場合、「共感」がキーポイントです。意志は共感の中から生まれるのです。子どもたちの遊びや生活が共感の中にあることが大切です。共感の中にいると子どもはそれらのすべてを遊びの中で模倣します。お父さんが喜んでお料理をしているとそれを見て「僕もやりたいなー」と思い真似をします。ところが、お父さんがいやいや料理をさせられていた場合、楽しそうでないお父さんの姿は真似しようとはしません。お父さんの姿は共感できないからです。
子どもは遊びの中で生活を通して共感した様々な出来事を鏡のように写しだします。それがあそびとなるのです。もし、生活の中で共感できるようなことがないとしたら遊べない子どもになります。

 子どもの遊びが発展していく様子を見てみますと意志が本能から決断に変容していく様子が手に取るように分かります。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、「本能」のまま、ただ手足をばたばた動かしているだけです。
いつの日か視線がある物をとらえます。「あ、触ってみたいなあー」という「衝動」が生まれます。触りたいという意志が寝返りを促し、はいはいを促していきます。
自由に触りたい物が触れるようになると、次から次へといろんな物を触りまくります。触りたいものは次から次へと現れて「欲望」となります。もう部屋中をちらかして、お母さんの大変な時期が始まります。

 2、3歳ごろになると自我が芽生え「動機」が生まれます。物を何かに見立てて遊ぶようになるのです。木切れを見て携帯電話に見立てたり、木の実をごばんに見立てたりして遊びます。物が動機(きっかけ)となって、遊びがより発展していきます。
 5歳ぐらいになると遊びのイメージが出来てきて「お店屋さんごっこしよう」と、自分がイメージした遊びをしたいと「願望」するようになります。
お店屋さんごっこをするためにはお店で売る物がいるし、売るものを並べる棚もいるというふうに、お店やさんごっこに必要なものを探します。こういうお店を作ろうという目的「意図」が生まれます。
必要な物も整った。お店屋さんのイメージも出来た。友だちを呼んできて「さーお店やさんごっこをしよう。」という「決断」を生むのです。

 このようなあそびの積み重ねが意志を育てていくのです。今はあそびですが、この意志は将来自分自身の人生のビジョンを見出しそれに向かって歩んでいく土台となるのです。子どもの遊びは意志を育てるためにとても大切なものなのですね。

 では、子どもの遊びを豊かにするにはどのような配慮が必要なのでしょう?

 シュタイナーは、真似をしたいと思う大人が必要だといいます。高橋弘子氏(みふじ幼稚園元園長)は現代において人が育たないのはまず、模倣すべき大人が身近にいないからだと述べておられます。子どもにとって理想的な環境はできるだけ家庭に近い状態に身をおくこと。その中で先生は子どもが遊んでいるかたわらで仕事をします。部屋では様々な手仕事や料理など、外遊びのときは庭の手入れなどをします。子どもたちは先生の仕事を見て刺激をうけそれが遊びへと発展していくのです。

 シュタイナー幼稚園の先生は子どもと一緒に遊びません。というより子どもの遊びを邪魔しません。想像力を高めるような自然素材の素朴なおもちゃがありその中で模倣したくなるお手本を示してくれる大人がいること。この二つが子どもたちの遊びを豊かに育んでいくのです。

 私は今まで大人から「あーしなさい。こうするのよ。」と言われて行動できる子どもではなく、 自分から行動できる主体的な子どもに育って欲しいと願って保育をしてきました。しかし、想像力を育てるおもちゃもお手本もなく「勝手に好きに遊びなさい。」と言っていただけでした。それはまさに放任でしかなかったのだと改めて思います。


 幼児期の課題とは、第一には、しなやかな身体を形成すること。それにはリズムのある生活と繰り返しが大切であること。
 第二には、感覚を大事にすること。それには環境に配慮することです。特に刺激の強いものから守ってあげることが必要です。
 第三に、意志を育てること。これは想像力を育むような素朴な自然素材のおもちゃと大人の良いお手本が必要であることを学びました。

 よくよく考えてみるとこれらのことは一昔前には当たり前に日常にあったものばかりです。私たちは便利な生活を手に入れた代わりにこれらの大切なものを失ってしまったのですね。子どもの成長は一足飛びにはいかないのです。昔から人間が営んできたことを丁寧に繰り返すことによって子どもは育っていくのだと思います。

 シュタイナーは子どもの年齢に即した、その年齢にふさわしい教育の仕方を指し示してくれました。
 シュタイナー幼稚園ではシュタイナーが示してくれた教育の実践が行われています。私は東京で実習させていただいてとても質の高い保育だと思いました。しかし、質の高い保育を実践しようと努力されているにもかかわらず運営的にはとても大変な様子も伺えました。シュタイナー幼稚園を始めようとすると無認可になり国からの助成金が無いのです。運営費を得るための努力が大変です。そこで働く教師の報酬も本当に少ないのです。そんな中でも使命感を持って働いておられる先生方に頭が下がります。私もひびきの村で学んだことを活かせるような保育の場を作りたいと思っているのですが、大きな課題を乗り切っていく覚悟が必要だと改めて思いました。


 手塚先生は最後に「子育てを通して大人も成長していくのです。」と述べておられました。「0歳~7歳の子どもの子育てでは、大人の意志の力も引き出してくれます。7歳~14歳までの子どもの子育てでは感情の力、14歳~21歳までの子育てでは思考の力を引き出してくれるのです。子育てが終わったときには子どもと共にダブルで大人も成長できるのですよ。」とおっしゃっていました。
 この言葉は、様々な子どもと出会い対応に悩んでいる保育者や、我が子の子育てで悩んでいるお母さんにとって本当に勇気付けられる言葉でした。子どもと共に生活しているから自分も成長できるのです。ありがたいことですね。
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# by higuchi1108 | 2007-08-31 20:59 | 幼児教育講座